黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

中国にも刺し身はある!ホーチョ族のタラハ(淡水魚のタタキ)

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▲こちらの記事が地味に面白かったので、写真をよく見ていると、ホーチョ族の料理に「塔拉哈」(タラハ)という聞き慣れないものがあり、調べてみたところ、これがタタキの一種であるのがわかったので、こちらにもまとめておきます。

【目次】

中国にも刺し身(生魚)を食べる習慣はある

ツイッターを長年やってると、たびたび話題になるのが、中国にも昔から刺し身を食べる習慣がある…という話。

今の中国では日本料理屋とか寿司屋が普通にありますから、生魚を食べるのも珍しくないのですが、昔はこういう習慣はなかった。というより、あまり見かけることがなかった。

私が以前から知っていたのは、

  • 広東省では生魚を食べる習慣がある…昔、順徳で淡水魚の刺し身を食べたことがあります。同じ料理を香港で出す店もあります。
  • 福建ではタコの刺身を食べる習慣がある…アモイで食べたことあります。新鮮で美味しかったです。
  • 東北の少数民族が食べるらしい…これは昔の『地球の歩き方』にちょこっとだけ記載があって、どういう料理なのか説明はありませんでした。

今回、AFPの記事で見つけた「タラハ」は、その東北の少数民族の料理にあたりますが、『地球の歩き方』に書いていたのと同じかは不明です。

場所はジャムスの近く

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▲一応、地理的な要素を頭に入れておきましょう。AFPの記事で出てくる「八岔島二道河原」は、黒龍江省の佳木斯(ジャムス)の東北部にあります。川向うはロシア。国境の町ですね。

タラハはどんな料理か?

▲AFPの記事の7枚目の写真に出てくるのですね…

焼き魚にするのなら、皮を剥く必要もなく、わざわざ串を2本刺して、ああやって焼くというのは、ちょっと変わってるな…と思ったのですね。他の地域でも魚を丸焼きにする調理法はありますけど、ここまで手はかけない。

▲百度百科にタラハの解説が2つありましたので、織り交ぜて要訳すると…

  • タラハはホーチョ語で「半生不熟」(半生で完全に火が通っていない)を意味する。ようするに日本語のタタキと同じですね。
  • ホーチョ族が普段食べている料理であり、客を招く際には欠かせられない料理である。
  • 現地の漁民はウスリー川で鮮魚を焼いて、塩か、調味料につけて食べる。
  • チョウザメの子供で作ったタラハは特に美味である。肉質は柔らかで、骨まで食べられる。(ただ、これを見るにチョウザメ以外でもOKということでは。AFPの記事の写真ではチョウザメらしき魚は見当たりません)
  • 調味料は、塩+味の素+ショウガ+ニンニク+米酢+ごま油+植物油+ネギ+ゴマ+カラシ油+砂糖+辣椒油を合わせて作るそうです。基本的に、これらの調味料は少数民族が元々持ってないタイプのものが多いため、漢族の影響を受けているのでは?と思いますし、後述しますが、これらは寄生虫対策とも思われます。

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▲上掲の百度百科より。この画像で見る限り、使用されているのはチョウザメじゃないように見えるのですが。

それと、AFPの記事のように皮を剥いて焼いているのとは別で、百度百科の写真を見ると、皮付きで焼いているのもあり、説明書きでも皮がついたまま焼いて、皮が焼けて音を立て始めたら出来上がり…みたいなことを書いてます。皮については魚種によって扱いが違うものと考えられます。

寄生虫は大丈夫なのか?

まずわかったのは、アニサキスは海のものなので、淡水魚は無関係ということ。

それと、そもそも完全生じゃなくて、炙ってタタキにするのは寄生虫対策なんだろうな…と思うのですね。

それと、作り方の部分を細かくみると、内蔵は全部捨てて、よく洗え…とか書いている。それなりに衛生にも配慮しているわけです。

味付けが「塩か調味料」となっているのは、たぶん本来は塩で食べるもので、調味料の方には醸造が必要なものや、少数民族が本来もってなさそうなものが含まれるため、これは漢族が持ち込んだもの、または漢族の影響を受けたものじゃないかと考えられます。

こんなに色々かき混ぜるのは「消毒」が目的じゃないかと思うのですね。中国人が日本の刺し身を食べる時に、ワサビをたくさん入れることがあるのですが、あれはワサビ好きだからじゃなくて、ワサビに殺菌・消毒効果があると思っているからだそうで。

あの少数民族地域で手に入る刺激の強い調味料や酢をとりあえず全部入れてみました!という感じの調味料なので、たぶん寄生虫対策のように思われます。

そして、こんな記事をみつけました…

黒龍江省の辺防総隊(国境警備隊)の巡回診療隊が、黒龍江省の撫遠市に来たところ、この地域は「タラハ」が好まれ、よく食べられるため、肝吸虫症の多発地域になっていた…という内容です(´Д⊂グスン

  • ヒトを含む幅広い哺乳類を終宿主とし、肝臓内の胆管に寄生する吸虫の1種。古くは肝臓ジストマと呼ばれてきた。
  • 【第2中間宿主】…モツゴ、ホンモロコ、タモロコ、ゼゼラ、ヒガイ、ヤリタナゴ、バラタナゴ、カネヒラ、ウグイ、フナ、コイ
  • 食欲不振、全身倦怠、下痢、腹部膨満、肝腫大をきたし、やがて腹水、浮腫、黄疸、貧血を起こすようになる
  • ただし、少数個体のみの寄生では無症状に近い
  • フナやコイはモツゴやホンモロコなどに比べるとメタセルカリアの保虫率ははるかに低いが、刺身などにして生で食べる機会が多いため、用心しなければならない。

以上、ウィキペディアからの抜粋ですが、やっぱり寄生虫はあるようです。

炙ることでちょっとはマシになっているのかな…と思いましたけど、効果ないみたいですね。

ただ、ここで気になるのは「第二中間宿主」の中に、チョウザメが含まれていないことですね。チョウザメだったら大丈夫なのかも?私も、中国でチョウザメの刺し身は何度か食べましたけど、大丈夫だったし。

責任持てないので「チョウザメだったら安全です!」とは断言しませんが、もし何らかの理由でタラハを食べることになった時は、チョウザメ以外は口にしない方が良いかも知れません。

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