昔、私が剣術道場の師範をやっていた頃、30代の小さな女性が習いに来ていた。他は20~30代のヤロウばかりだけど、彼女は小さな身体ながら一生懸命がんばってた。より厳しく、実戦的な訓練を受けたいと言うので、不思議に思い、ある日、動機を聞いてみると、彼女は痴漢の被害によく遭う…のがわかった。
— 黒色中国 (@bci_) May 24, 2019
最近ツイッターでも話題の「安全ピンで痴漢撃退」の是非に関する議論を見ている内に、私も思い出すことがあったので書いたツイートが非常にたくさんの方に読まれました。
もう、これ以上書くことはない…というぐらいに書きまくったので、こちらで追記することはありません。
ただ、この連投を書いたら、色んな人からバッシングを受けました。こんなことでバッシングされなくちゃいけないのが私にはよくわからない。男性が女性の立場で発言したり、擁護するのは、「女に媚びている」と認識する人が多いようで、それは大きな発見であり、同時に大変遺憾でもありました。
私自身は、特にフェミニストというわけでもなく、ただ身近な知人の可哀想な事例として、あの話を紹介しただけなんですけどね。
でも、連投の中でも書きましたけど、ストーカーに追い回されることで大変な人生になってしまった知人がいて、彼女の話を聞いた時に、世の中の男には可視化されていない女性の苦労があるのだなぁ…と思い、それ以来女性の悲遇に肩入れするようになったのは自覚しています。
というわけで、こちらにその女性の話をちょっと書いておこうと思います。
【目次】
ストーカーを引き寄せてしまう女性たち
たまたま、私が旅先で知り合った女性と仲良くなって、話し込んでいる時に、お互いの身の上話になって、彼女の今までのストーカー体験を教えてもらえたのですが、それまで私は「ストーカー」といえば特定の誰かが、ずっと追いかけてくるものだとばかり思っていたのですけど、彼女の場合はそうじゃなかった。
彼女は特に「超美人」じゃないけど、独特の雰囲気があり、好感度高い。一緒にいて嫌な感じが全然しない、無色透明無味無臭の新鮮な湧き水みたいな人で、数時間一緒にいるだけで昔からの友達みたいな気分になれる人でした。
たぶん、そういう彼女の人柄が「変な人」を吸い寄せるのか、男に「彼女はオレに気がある」と錯覚させてしまうのか、彼女の行く先々、いつでもどこでも、彼女を追いかけ回す人たちが出てくるので、就職もできない(会社勤務だと会社でストーカーが…上司に相談したら上司も…)、バイトも客商売や不特定多数の人と接触の多い仕事はできない(パン屋で働いたら客がストーカーに…)、店長に相談してもまともに取り合ってくれない(お客さんだから上手くやってよ、ちゃんと断れないアナタが悪いんでしょ…みたいな)。そして道を歩いているだけでも…という繰り返しで今までの人生を生きてきたそうです。
だから、能力優秀で頭が良いけど、どこかの会社で働くのもできず、バイトも人前に出なくて済む工場勤務みたいなのばかりで(制服にマスクや帽子を着込むし、あまり話さず作業に没頭するので「能力」を発揮せずにすむらしい)、外出はあまりせず、近所を出歩くのも控えて、服は地味なのを選んで着て、隠遁生活みたいなのをやってきたため、ずっと結婚できず、たまに海外旅行するのが唯一の息抜き(海外で彼女の「ストーカー引き寄せ能力」は発揮されないらしい)…という人なのでした。
「ええー!」「ホントにそうなの?」「どうやって今まで生きてきたの?」と数分置きに連発するぐらい、男には信じられないようなストーカー体験と隠遁生活を彼女はされてきたわけですが、彼女によると、「そういう女子は普通にいる」とのことでした。男が知らないだけなんですね…私が知らないだけかも知れませんが。
「引き寄せ能力」を持つ全ての女性が隠遁生活を送れるわけではない
それから数年経って、別の女性からもほぼ同様の境遇にあり、隠遁生活を送っているのを打ち明けてもらった経験があり、「彼女が言ってたのは本当だったんだ」と改めてわかったのでした。
その別の女性の話を要約すると…
- 家から出られない。ほぼ出ない。
- 買い物は家族に行ってもらってる。
- 不特定多数の人がいる場所にいけない(喫茶店とか)。
…もっとたくさんあるのだけど、個人特定情報にもなりかねないので書けません。
私自身は彼女たちが魅力的だとは思いながらも、彼女たちの「引き寄せ能力」が通じないタイプみたいで、追いかけ回そうという気にもなれないし、彼女たち自身が、「あなたは『男』という感じじゃないw」というので、こうやって言いにくい話を打ち明けてもらえました。
世の中の「引き寄せ能力」を持つ全ての女性が隠遁生活を送れるわけでもなく、街を歩いたり、働いたりする中で、大変な目に遭っている。そういう女性たちの悲遇の1つとして今回の「安全ピン」の話が出てきたのだろうな…と思うし(これって偶然ではなく、コンスタントに痴漢に襲われる女性の対抗策ですから)、「女性擁護」とか「フェミニズム」じゃなくて、私にとっては身近な知人の苦労話の延長にしか思えなかった…ということです。
そして、こういう悲遇に悩む女性の存在を知らずに、痴漢のことは棚にあげて、法律の話ばかりして、彼女たちを一方的に断罪されてもなぁ…と、つい同情したのでした。