ツイッターで卵の話題が出る度に、中国人は生卵を食べるか食べないか、そもそも中国のタマゴは食べられない?いや、最近は食べられる!という話が毎回出てくるので、こちらにそれらの情報を整理しておこうと思います。
【目次】
昔ながらの中国での卵の販売スタイル
中国の市場で売られてる卵には生産日が明記されてない…という話は既にしたが、中国ではそれよりも産地が気になるようだ。大体、産地が明記されている。慣れれば鮮度は見分けがついても、産地まではわからないからであろう #上海南市探訪 #望雲路 pic.twitter.com/1UallTeuOR
— 黒色中国 (@bci_) November 7, 2014
▲昔から、中国で卵はこんな風に売られておりました。ツイートにも書いているけど、「生産日」とか「賞味期限」は書いてません。これでは怖くて生では食べられませんよね。しかも、パック詰めもされてないので、殻に菌とかたくさん付きそうだし。重ね置きした重みで下の卵が潰れて、それが殻の表面についていたりして、衛生的な感じではありません。そもそもこういう「売り方」では、中国人が習慣的に生卵を食べるか食べないかという以前に、生食が発達しなくても当然だった…と考えられます。
現在の中国での卵の販売スタイル
…と言う訳で、早速、卵をゲットしてきました。上海で生産されている日本ブランド?「伊勢栄養鸡蛋」日本式品質管理で生産されているそうで、生産日も明記されてます。10個入りで17元くらいでした。高給に見えて、結構、割安感あります #上海で卵 pic.twitter.com/WyhBEiLysk
— 黒色中国 (@bci_) November 1, 2014
先程の昔ながらの市場での売り方とは別で、最近は中国でもある程度の規模の都市になれば、スーパーマーケットがありますから、そういうところだと日本と同じようにパック詰めの卵が売られており、生産日も書かれております。
そしてツイートをよく見て欲しいのですが、「伊勢栄養鶏卵」と書かれております。この「伊勢」というのは…
▲こちらの日本企業です。
▲2007年のところに
三井物産と鶏卵の生産・販売を行う合弁会社「伊勢農業有限公司」を中国で設立。
…とあります。
▲現在、北京、青島、広東省の河源市に現地法人があります。
私は上海にいる時に何度か、この伊勢の卵を買ったことがありました。
先ほどの伊勢栄養鶏卵を箸でかき混ぜてみたけど、かき混ぜ始めに、黄身に重みあり、混ぜていると普通の中国の卵よりも、全体的に抵抗感が強め。それだけしっかりしている卵なのだろう。雑炊に入れて食してみたが、これはもう普通の日本の卵と同じと思う。明日は別の調理法を試してみよう #上海で卵
— 黒色中国 (@bci_) November 1, 2014
4年前のツイートでこのような感想を書いてますが、生食でも全然大丈夫な感じでした。
生食するかしないかというのとは別で、中国では卵の鮮度を買う時に自分で確かめなくちゃいけないとか、ニセ卵とかもありましたし、豊かになって食の安全を求めるようになってから、日本式の鶏卵の生産と流通が普及するようになったのでしょう。上掲の伊勢さん以外にも中国のスーパーに行くと、日本と似たようなパックに入った卵が売られています。
中国人も生卵を食べ始めている
【生卵をおいしそうに食べる日本人を見ても「中国では真似しちゃダメ」】中国メディアの大河網はこのほど、生卵は加熱調理した卵よりも栄養が豊富であるという情報に基づいて、多くの中国人たちが「日本人に見倣って生卵を食べ始めている」と伝えた https://t.co/nDkd4bWRxS
— 黒色中国 (@bci_) February 13, 2019
▲こういうニュースがありましたが、これは2016年12月のサーチナの記事ですから、それ以前から生卵を食べる中国人は存在していたことになります。
私が知る限りで言うと、2014年の時点で上海の友人が上海の日本食レストランですき焼きを食べるのが好きで、その際に溶き卵で食べている…とのことでした。ツイッターでも同様に中国の日本食レストランのすき焼きに生卵のオプションがあるとか、溶き卵ですき焼きを食べている中国人を見た…という話をしているので、上掲のニュースで伝えているように、中国人の間で、鶏卵の生食が浸透しつつあるのは間違いないようです。
それと、日本に留学していた私の友人が、日本で半生の目玉焼きを覚えて、中国に戻ってから家族に振る舞うと、年配者は嫌がるけど、先入観のない子供(小学生)だと半生の目玉焼きが大好きになって半生でないと駄々をこねる…ということもありました。
この時点での情報をまとめてみると
- 昔の中国の卵の売り方はそれで生食にしようと思えるようなものではなかった(売り方の問題と、生産日が不明な点)
- かなり前から、衛生的で安全な卵の生産と流通が中国でも始まっている。
(伊勢の卵でいえば2007年から既に中国での事業を開始しているから、現在で12年目です) - 日本食の影響で、生卵を食べる人が次第に増えているので、中国のメディアも注意する記事を掲載しているぐらい。すき焼きにしろ、黄身が半生の目玉焼きにしろ、日本の影響が強いみたい。
…ということになります。
中国企業も高品質な卵の生産を始めている
▲ツイッターで教えてもらったのですが、「圣迪乐村」(聖迪楽村)という名前の鶏卵を生産している企業があるそうです。
▲こちらを見ればわかりますけど、「生食可」とは書かないものの、かなり生食(半生)を意識した料理の事例を紹介しています。
▲こちらを見ると、生産から出荷までの様子が紹介されているのですが
▲「洗浄」(清洗)や「紫外线杀菌」(紫外線殺菌)とありますので、かなり衛生にも気をつけているみたいです。
ですから、以上の状況から察するに…
- 中国の卵は従来での生産・流通以外に、品質や衛生に配慮した高級品が普及しつつある。
- それらは「生食のため」ではないが、安全性の高さを追求する上で「生食可能」な品質を目標としているようだ。
- そういう事情もあり、日本食の影響などもあって、中国人の卵の生食(ないし半生)は普及の過程にある。
…という状況にあると思われます。
日本の卵だからといって、無条件で生食できるわけではない
ツイッターでフォロワーの方から教えてもらったのですが、実は日本の保健所でも卵の生食はススメてないそうです。
これらの注意を見ていると、新鮮な卵を賞味期限内に、ちゃんと冷蔵庫で保管されたもので、殻が割れたりすることのないものを、調理から間を置かずにすぐ食べることが要求されているわけです。
中国では卵の生産から流通⇒家庭での保存、調理に至るまでの過程で、充分な衛生環境やら冷蔵が今までは不可能だったため「生食」に不向きだった…というのが実情で、中国人は卵を生食しない⇒中国の生卵は不衛生だから…というわけでないと考えられます。
なぜ日本人だけが喜んで生卵を食べるのか (ワニブックスPLUS新書)
- 作者: 伊丹由宇
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2011/10/08
- メディア: 新書
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 今日の発見 私自身の発見としては、ツイッターで中国での卵の生食について話始めた時に、次々に生食の事例をリプライいただいたこと…私の知る範囲以上に卵の生食が中国で普及し、聖迪楽村のような、中国の鶏卵生産企業も既に出てきている…ということですね。中国人は食文化に保守的だと思っていたのですけど、変化するのは予想外に早かった…ということです。