▲第2回のホットドッグの記事でも書いたけど、昔、香港にいた頃、仕事のない土日は少し早起きして、朝食のためにちょっと遠出するのが私の楽しみだった。
友人たちと飲茶を楽しむことが多かったが、一人の時は普段の暴飲暴食で疲れた胃腸をいたわるために、お粥を食べることがあった。
私にとって香港でお粥と言えば、豚レバーの入ったもの。銅鑼湾のそごうの裏にあった李苑が最上で、その次が上環と中環の間ぐらいのところにある羅富記である。この記事に掲載している写真は全て羅富記の豚肝粥だ。
多くの日本人にとって、「豚レバー」は「ニラレバ」の時ぐらいしかご縁がない食材と思われる。しかも、ニラレバは豚レバーの臭みを消すことに重点が置かれる料理でもある。
ただし、新鮮な豚レバーは、臭みが全くしない。先に挙げた李苑と羅富記では、まるで店の裏で生きた豚から摘出してきたんじゃないか…と思うぐらいの鮮度のレバーが出てくる。特に李苑の豚レバーの鮮度は完璧とも言えるレベルだった。
たぶん流通の問題なのだろうが、大陸ではこれに匹敵する鮮度の豚レバーにお目にかかったことがない。
新鮮な豚レバーを熱い粥に入れると、この写真のように角が少し「反る」。エッジが立っているのは新鮮さの証拠である。口の中に入れて噛むと、柔らかいけど、弾力があって、舌の上で跳ね踊るような食感がある。
そして、新鮮な豚レバーを粥の中で熱すると、金色のしずくが流れ出る。これは血ではないと思う。肝臓の中に含まれるなんらかの分泌液なのか。少し独特の苦味があるけど、それがいい。
豚レバーは粥の中に入れているだけで、ネギを散らしている他、何の臭み消しもしていないけれど、食べても臭くない。
新鮮な豚レバーを味わう最上の調理法
豚レバーのお粥は、新鮮な豚レバーを最も美味しく食べるための調理法であると思う。
重湯に近いお粥の中にくるむようにして、新鮮な豚レバーにゆっくりと火を通す。 こうすると、豚レバーは固くもならず、香りも保たれるし、口に入れる直前まで、豚レバーは粥に温められている。加熱されることで出てくる豚レバーの旨味は、粥の中に溶けこむので一滴も失われることはない。
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中国の昔の話でたまに、人間の肝を食して長生きするとか、不老不死を得るというエピソードがある。私が子供の頃は、この手の話を、気味の悪い奇習と思っていた。
でも、新鮮な豚レバーのお粥を食べると、少なくともその日一日は、身体がスッキリしたような感じがする。胃腸の働きが整えられるのか…内臓から「重み」が消えるような…。新鮮なレバーには、何らかの特別な滋養が含まれているのだろうか。
香港で豚レバーのお粥を食べるようになって以来、中国の昔話で、僧侶や子供の生肝を食して不老不死を…という話を聞く度に、私は「そりゃ確かに効果あるだろうな」と深く納得するようになったのであった。
香港行ったらこれ食べよう!: 地元っ子、旅のリピーターに聞きました。
- 作者:真理子, 清水
- 発売日: 2017/09/04
- メディア: 単行本