黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

2015年以後、アイ・ウェイウェイは何をしているのか?

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アイ・ウェイウェイはいろんなジャンルに手を出すので、元々何の現代美術家だったのかわからなくなってきたけれど、最近は映像制作に取り組んでいるようです。

中国を見る時に、中共だの解放軍だの、食の安全(毒餃子やダンボール入り豚まん、地溝油など)、高速鉄道の事故などを取り上げて、脅威を煽ったり、見下してみたりするのが日本の中国報道の論調ですけど、私としてはそれらとは別で、中国の芸術家に注目するようにしております。表現の問題や厳しい弾圧を経験しながら、今の中国に向き合っている彼らの足取りや考えをみつめることで、一般的な中国報道では見えてこない別の視点が持てるからです。

それにしても…一時期は、アイ・ウェイウェイに関するニュースが多くて、何かと話題の人だったけれど、最近になって彼のニュースを聞かなくなったのはなぜなのか?

そういう疑問をこの半年ほど、ボンヤリと考えていたところでしたので、これを機会に彼の近年の足取りを調べてみたのでした。

【目次】

2009年から2012年まで

アイ・ウェイウェイさんはツイッターをやってますから、私がツイッターを始めた当初から(2009年6月以後)ずっと彼のツイートを見ていたのですが、四川大地震で亡くなった子供の名前を調べて、それをツイートする…というのをやっていたように記憶しています。

それ以後から、自宅軟禁されたり(2010年10月)、北京の空港から出国しようとして止められたり(2011年4月)、「脱税」を口実に巨額の追徴課税を請求されたり(2011年6月)…と災難が続きます。

▲詳しくはウィキペディア日本語版に記載されていますけど、こちらでは、2015年以後のことが書かれていません。

日本語でグーグル検索しても2015年以後のことは情報が少なく、断片的にしか出てこないので、全容がつかみにくなっています。

私自身、非常に気になるので、こちらで分かる範囲でまとめておこうと思います。

2015年

▲7月23日、国外への渡航を禁じられていたアイ・ウェイウェイは政府からパスポートが返還。

▲2015年9月29日の記事。2015年3月11日にはじまった国内外12組のアーティストによる国際展「Don’t Follow the Wind」にアイ・ウェイウェイも参加していた。

▲10月26日の記事。

▲11月19日の記事。ロンドンで開催された展示会の紹介。

2016年

▲1月15日の記事。

▲4月29日の記事。ここで興味深い発言がある。中国で自由を奪われていたのが昨年のことなので、まだその経験が生々しい時期の、彼の内心を覗き見るかのような言葉だ。以下に引用しておく。

「ある意味で、我々は全員『囚人』なのだ。ある者は非常に意識が高く、ある者は他人のルールによってコントロールされ、ある者は世界に対する自分自身の認識や知識によってコントロールされる。こういった意味で、我々は全員囚人だと思う。だからこそ、自由を手に入れたいと欲する。こうした(何らかの形で囚われているという)制約がないならば、私にとって自由の意味は存在しない」

▲5月3日の記事。「難民問題に関する映画制作」についてのインタビュー。この時点で「撮影されたフィルムの量は600時間分に及び、100回のインタビューが行われた」とあるので、既に『ヒューマンフロー』の撮影はそこまで進んでいた…または完了していた…ということか。

2017年

▲ドキュメンタリー映画『ヒューマンフロー』は、日本では2019年1月からの公開ですが、もうこの時点で撮影は終わっていた?みたいで夏の公開と記事にはあります。

▲7月15日の記事。ニューヨークで開催された展示会について。

▲8月4日から開催の「ヨコハマトリエンナーレ」に関する記事。

▲10月5日の記事。スイスで開催された展覧会に関する記事。

▲11月8日の記事。『ヒューマンフロー』の紹介。

2018年

▲5月17日。GQジャパンに掲載された記事。

▲8月3日、北京郊外のスタジオが取り壊し

2019年

▲1月11日の記事。12日から公開のドキュメンタリー映画『ヒューマンフロー』に関する内容。

* * * * * 

大雑把ではありますが、以上となります。

2015年以後、私がニュースでアイ・ウェイウェイをあまり見ることがなくなったのは、中共による弾圧が一区切りついて、活動の拠点が海外に移ったため「ニュース」として報じられることがなかった…ということのようです。

気になるので、また時間がある時に他の記事も探して、差し込んでおこうとは思いますが、ここで並べてみたニュースだけで考えた場合、

  • 2015年にパスポートを返してもらって、国外へ行けるようにはなったものの、当局による弾圧の印象が強かったので、「反体制」「人権活動家」という枠組みで報道されたり、扱われることが多かった。
  • レゴの販売拒否以後、アイ・ウェイウェイが映像制作に移行するのは、素材が必要な作品制作の場合、またレゴと同じように販売拒否されてしまうのを回避するためではないか?(あくまでも私の推測)
  • 『ヒューマンフロー』は日本では2019年からの公開だけど、本作の撮影開始はかなり前に遡る(2016年以前?)。
  • 2017年のヨコハマトリエンナーレでは難民をテーマにした作品を出展している。
    ⇒難民問題に関心を持つようになった時期とキッカケは何だったのか?

結局、2015年以後、アイ・ウェイウェイ自身も「難民」になったようなものなので、そうした自己を難民問題に投影しているのかも知れません。

しばらく、アイ・ウェイウェイについては追っかけてみようと思います。

アイ・ウェイウェイ スタイル

アイ・ウェイウェイ スタイル

 

▲アイ・ウェイウェイに関連する本は幾つかあるのですが、日本で刊行されたのは2011年から2014年までに集中しており、『アイ・ウェイウェイスタイル』はその中で最も新しい本…となります。ただそれでも既に5年前の本なのですが。現代中国を考える上で、重要な人物でありますから、この5年間の彼の足取りをアップデートした内容の書籍がそろそろ欲しいところです。 

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