黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

安田純平さんと自己責任について

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昨日からツイッターのTLはこのニュースばっかりになりましたが、なぜか安田純平さんを非難する発言もたくさん見かけます。

私の考えをこちらに書いておこうと思います。

 私は安田純平さんのようなジャーナリストではないものの、中国との関わりが深く、他の日本人があまり経験しないことも少なくないので、「黒色中国」という名前でツイッターやブログでその経験や考察を発信しています。

長く中国に関わっていると、警察に拘束されることも何度かありました。不明の施設に接近してよくわからない立場のガードマン?に拘束されることもありました。知らない人が近づいてきて、私の身元などについて質問されることもありました。

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私は運良く、短時間の拘束だけですみましたけど、私の友人は1週間ほど拘束され、取り調べを受けました。何も悪いことはしてませんでしたが、あちらで「スパイ」と疑われると、大した証拠がなくても、証拠が出るまで拘束されて、ネチネチ調べられるわけです。

だから、ジャーナリストが拘束された…というニュースを見る度に、あまり他人事とは思ってません。いつか自分もそうなるのかも知れない…と想像するわけです。

実際、中国でスパイ容疑をかけられ長期拘束されている日本人はいるわけで、中東で武装勢力に拘束されるのとはちょっと違うけど、他人事じゃないな…と思うわけです。

私が中国で拘束された件

中国では街中で突然、「外国人が近寄ると何かと不都合がある場所」があったりする。それと、私は釣りが好きなので、あまりヨソモノが来ない辺鄙な場所に行くわけですが、そういうところに「立ち入り禁止」とも「軍事施設」とも書かず、そもそも施設の名称も書かず、いきなりなんらかの重要施設があって、いきなり重大犯罪を犯したかのような騒ぎになって拘束されてしまう…ということがあるのです。

建物の中に連行されて、不自然なほど大きな鏡のある部屋に通されると、鏡の方に向いた椅子が2つ並んでいましたが、そこで尋問をする人と横並びで、つまり鏡の方に顔が向くように座らされ、いろいろ聞かれるわけです。

しばらくすると、尋問をしていた人は席を外して(たぶん私の処分を相談しにいったのかと思われ)、大きな鏡の前で座ったまま、一人ぼっちでじっと彼が帰ってくるのを待たされれるわけですが、「たぶんこの鏡はマジックミラーで、いま私は撮影されているんだろうな」とわかるわけです。不気味なほど静かで、憂鬱な時間。本当に私は帰れるんだろうか…10分ぐらいの短い時間が、1時間にも2時間にも長く感じる。とても不安になるわけです。

突如警官に拘禁されて、「オマエは日本のスパイだろ」「日本のどこの機関のものだ」「何の目的で中国に来た」と怒鳴られ続けたこともあるんですけど、こういうのって経験してみないとわからない。とても怖いです。

安田純平さんの場合、3年半も拘束されていたし、武装勢力に捕らわれていたわけで、私なんかとは全く比べ物にならないほどの孤独と不安を感じていたと思うのですね。

私は彼の本を読んだことも、彼の仕事を見たこともないのですが、3年半の拘束に耐えたわけで、その点については私も経験者として(彼に比べると全く比較にならない程度ですが)非常にリスペクトします。

自己責任について

ツイッターの反応を見ていると、「自己責任」を理由に安田純平さんを糾弾する人がいる。確かに、そもそも危険そうなところに行かなければこういうことは起きない。因果関係を紐解くと、安田純平さんがシリアに行ったことが大きな原因とも言える。

でも、安田純平さんは悪いことをしたのでしょうか。安田純平さんを拘束する武装勢力が悪いのではないでしょうか。

私の場合に置き換えて考えてみると、中国に行かなければそんな目には遭わなかったんだとか、辺鄙なところで釣りをするからダメなんだろう…という話になってくる。

何か悪いことをしたわけでもない人を、3年半も拘束して身代金を要求する武装勢力を非難するよりも、拘束された可哀想な被害者の方を非難する…何か、違うんじゃないかな…と思うわけです。

 

この人達の批判は武装勢力の方には向かない。

勇気を持って私達に実情を伝えようとした人を袋叩きにする。

一体彼らはどちらの側に立っているのか。

 

こういう人たちが幅を利かす世の中というのは、外の世界への関心や好奇心を持つのがためらわれるような、内向きの閉鎖的なものなんだろうな…と思うし、今の日本は実際そうなっているわけです。

日本がそういう国になるのは良くないことなので、安田純平さんを攻撃する風潮をよく思いません。

私はジャーナリストじゃなくて、単なるお気楽なブロガーにすぎないわけですが、日本の内向きな風潮に抗うつもりで、今後も中国のいろんなところへ行って、ツイッターやブログで情報を共有したいと改めて決意した所存です。

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