黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

中国料理は油っこいものばかり…という「思い込み」で忌避する残念な日本人

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中国料理について、あまり中国と縁がない日本人と話すと、よく出てくるのが「中国の料理は油っこいから…」という否定的な意見だ。

たとえば、どんな料理が油っこいと思うのですか?…と聞いてみると、炒めもの麻婆豆腐餃子酢豚北京ダック…と並ぶわけだが、ようするにこの手の人たちは、中国料理といえば油っこいのしか知らないのだ。

中国人が毎日三食そういうものばかり食べているとでも思っているのだろうか?

【目次】

北京ダックは確かに油っこいけれど、あんなもの、一人で一匹ガッツリ食べるものではない。

中国だと餃子は水餃子が基本で、焼き餃子はあまりない。

炒めものとかは確かにたっぷり油を使っていたりするけれど、そればっかり食べているわけではないからなぁ…と私は思うわけだ。

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▲ちょうど今日、ツイッターで話題に出たもので、茹でた手羽先を紹興酒に浸したものがある。これなんか、非常にサッパリしている。

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▲こちらは中国の各地で一般的に食べられている蘭州ラーメンというものだけど、これもサッパリしている。日本の背脂が入ったり、脂身の多いチャーシューが入ったラーメンの方がずっとコッテリ油っこいのではないか。

気候によって脂肪の摂取量が変わってくる

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北の寒い地方に行くと、「川白肉」という鍋料理があって、酸っぱく漬け込んだ白菜の刻んだものを鍋に入れて、この上に豚の三枚肉をスライスしたのを乗せて食べるのがよくある。

豚の三枚肉を中国語では「五花肉」(ウーホアロウ)と言って、これが大好物な人がいるけれど、主に寒い地域の人ではないか。冬の寒さに耐えられるように、脂肪分を多目に取る食習慣になっているのだろう。

そういう地域の中国人でも、ただ三枚肉をガツガツ食べるのはキツイので、薄切りにして鍋で余分な油を落としつつ、酸っぱい白菜と一緒に食べる。気候に適応すべく、脂肪を美味しく摂取するために生まれた知恵だろう。

ちなみにこの料理、三枚肉で白菜を包んで、ちょっと醤油を落として食べると、非常に日本人向きの味わいになる。

タレまで一滴残さず飲み干すものではない

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四川料理に「口水鶏」(よだれ鶏)という料理があって、これは結構それなりに油を使うけれど、「タレ」の部分は飲むわけではない。どちらかといえば、スパイスのお陰もあって爽やかな味わいである。

油っこいので有名な料理だが、毎日食べるものではない

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今まで私が一番油っこいと思った料理は山西省の「過油肉」(グオヨウロウ)というもので、これは名前も見た目も油まみれでヌルヌルだ…でもウマイ。一口食べると理性が弾けて全部平らげずには居られない。

でも、山西の人に聞いてみたら、「アレは有名な料理だけど、山西人だからといって毎日食べるわけじゃない。私はあまり好きじゃない」と言っていた。日本人だって毎日天ぷらを食べているわけではない。

肉体労働者・若者ためのガッツリ系

 去年の天津大爆発の時のツイートで、武警に配給されている食事が大きな話題となったけれど、彼らが食べているような食事は、あくまでも肉体労働者のためのものである。

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▲似たようなものは街中でも食べられる。これは上海のレストランで食べたもので15元。ご飯おかわり自由で、頼めばオカズも多目に盛ってもらえる。ものすごいハイカロリーの食事だと思うけど、中国人全員がこういう食事をやってるわけでもないし、こういうのを三食食べているものでもない。私もこれは3日に1回で充分である。

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▲朝は、こういうワンタンだけで済ませたりする。

逆に、日本料理は油っこくなく、サッパリしていると言われるけれど、日本人も毎日スシだのサシミばかり食べているわけではない。食生活の欧米化で日本人が普段食べているものも、結構油っこいものが多いのではないか。

日本に普及する「少見多怪」の中国論

油っこい中国料理を探せば幾らでも出てくるだろうけど、毎日三食そればかり食べているわけでもないし、地域によっては気候的な要因もある。

そういう状況を無視して、自分の知っている中国料理だけ並べて、中国料理は油っこいから…と言っている人を見ると、残念な気分になるのである。こういう「理解」の仕方は、単に料理だけにとどまらず、日本人の中国理解の多くは、このような「少見多怪」で成立しているからだ。

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