【「中国特別版Windows 10」の存在をMicrosoftが明らかに】中国向けにカスタマイズされたWindows 10は、Microsoftの自社製品が中国で動作するように調整されており、ノーマルバージョンより多くの管理… https://t.co/6w50q3EhSJ
— 黒色中国 (@bci_) 2016年3月29日
このニュースを見た時に、「ああ、やっぱりそうか」と思った。というのも、2010年のグーグルの中国撤退の時に、ビル・ゲイツが「興味深い発言」をしていたからだ。
グーグルの中国撤退時のビル・ゲイツのコメント
米マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長がこのほど、中国の検閲体制を批判し、市場から撤退する可能性を示唆する米大手サーチエンジンGoogle(グーグル)社に対して、「多国籍企業が他国でビジネスをするなら、現地の法律を順守すべきだ」と発言したことが、中国でも話題を呼んでいる。
(中略)
同氏は、ネット上の内容が世界のあらゆる地域でさまざまな検閲制度の影響を受けていることを認めた上で、「もし、他国の法律を守ってビジネスをするというのであれば残れるだろうが、できないというなら、その国でのビジネスにいい結果は生まれないだろう」とコメントし、グーグル社の対中方針を批判した。
2010年に、私がこのコメントを読んだ時、「経営者としては、そういう考え方もあるんだろうな…」と思ったのを覚えている。
中国のネット検閲システムと西側のIT企業の関わり
「自由と民主主義はどうなるんだ!」
「西側の企業が金のために中共の言いなりになっていいのか!」
…とお怒りの方もいらっしゃるだろうが、
開発
グレート・ファイアウォールの開発費は人民元60億(日本円約743億円)。金盾計画全体では64億人民元(約800億円)にもおよぶ。このシステムの開発、運用には多くの多国籍企業が関わっている。シスコシステムズ、モトローラ、サン・マイクロシステムズ、ノーテルネットワークス、AOL、ネットワークアソシエイツ(現マカフィー)、マイクロソフト等の、アメリカ合衆国のIT大手企業の名前が挙がっており、現在は米国内でも問題となっている。
そもそも、中国のネット検閲システムである「金盾」(グレート・ファイアウォール)の開発には多くの西側企業…主に米国の企業が関わっている。中国全土を覆う壮大なネット検閲システムは、西側の協力によって成立しているものなのだ。
だから、マイクロソフトが「中国特別版Windows10」を開発しても全く不思議はない。そもそも、彼らは以前から中国のネット検閲の協力者なのだから…。
* * * * *
ちなみに、2009年に黒色中国BLOGが開始した際の旧ドメイン(www.blackchina.info)は金盾によって検閲対象となっていた。
▲こちらはウィキペディアの「金盾」の中の項目だが、この中の「ニュースサイト」の一番下に「黒色中国」が出てくる。
監視・検閲は中国だけのことではない
時同じくして最近、FBIがアップルにiPhoneのロック解錠を要求して、これをアップルが拒否したことがずっと話題になっていたが
結局、他社の協力によってロック解除が出来てしまった。しかも、この会社は日本企業の子会社であったりする。
▲こちらは3年前の話だ。
広く一般の個人に高度な情報機器が普及するようになった今、国家が通信を監視したり、情報機器をハッキングしようとするのは、何も中国に限った話ではない。
どこの国家でも、大なり小なり、取り組んでいることではないかと思われる…というのが私の所感だけど、たぶん「中国は人民や少数民族の弾圧をしているんだぞ!オマエはそれを認めるのか!」と怒鳴りこんでくる人がいるような気がする。
しかし、繰り返すようだが、そういうのも全て織り込み済みで、西側の企業は中国に協力し、その一方で米国も情報収集を行ってきたわけで、たまたまわかりやすい形で、これらの監視・検閲体制の取り組みが「可視化」されているのが、中国だった…ということに過ぎない。
文革で被害に遭った老人に会った時…
そもそも、中国人は国家の監視を当然のように知っているので、非常に慎重である。
私が以前、中国で会った老人は、文化大革命の時にヒドイ目にあった人だった。この老人と会って話す時に、私が聞き取れない単語をメモに書いてもらったり、もしくは会話の内容を私がメモしていたのだけど、別れる時は老人が私のメモを全部取り上げて、細かくちぎって紙吹雪のようにして、その上で灰皿で燃やしてしまった。
「そこまでする必要があるのですか?」…私が半ばあきれながら聞いてみると。
「見られると誤解されるかも知れない」という。
「誰がそれを見るんですか?そもそも私とあなたがここで会っていることだって誰も知らないだろうし…」
「いや、知ってますよ」
「誰がですか?」
「誰かが…ここにあなたが入ってきた時からずっと見てますよ」
…と無感動な口調で老人は窓の外を見た。それがこの国では当然なのだ…と言わんばかりであった。
ようするに、「上に政策あれば、下に対策あり」だ。
デジタルの情報は、紙のようにちぎって燃やすことはできないけれど、国や企業に「なぜ監視をするんだ!」文句をつけるよりも、まずは自分で出来る対策を身につけたほうが良さそうである。
自由や民主は、国や企業に文句をつけて与えられるものではなく、それを必要とする人が、知恵をしぼって自分の手でつかむものではないだろうか。