上掲の拙ブログ記事は、ツイッターで450回以上RTされ、はてなブログ移転後で最も多くの人々に読まれた記事となった。衝撃的な事案であったため、多くの人々に関心を持ってもらえたのだと思う。記事公開後にツイッターで多くの方々から情報提供を戴き、追記を4つも加えたのだが、この件に関しては後日、福島香織さんが、日経ビジネスの記事で、詳しく深堀りしてくれている。
【パラオ海底の五星紅旗の愚】「天皇訪問」直前の挑発、「単なる悪戯」か?
より深くこの件について知りたい方には、福島さんの記事を読まれるのをお勧めする。
パラオの中国国旗の件は、その後寄せられた多くの情報などもあり、私もブログ記事で書いた以外に色々考えるところがあるものの、1つの記事としてまとめるには至らない断片的なものに留まっている。ただ、これをそのまま捨て置くのも勿体無いと思うので、『雑記』として幾つか取り上げておきたい。
中国国旗の『折り目』
改めて日本軍沈没船に掲げられた中国国旗の写真を見ていると、格子状の「線」が入っていることに気がついた。これは一体何なのだろうか?2倍に拡大してみた。
これは「折り目」である。かなりクッキリとした折り目で、水中にあっても、しっかりと残っている。
これは購入したばかりで、包装を未開封の状態ではキッチリと旗が折られていたのか、ここに国旗を掲げる人物が持ち運ぶにあたって小さく折りたたんだのか…いずれかは不明であるが、水中において布地の折り目がずっと消えずに残り続けるものだろうか?産経の記事では「付着物が少ないので一週間以内に取り付け…」とあったけれど、1週間海中にあっても折り目は消えないのか。まるで国旗を取り付けてから、すぐに撮影した写真のようでもある。
かといって、この折り目の件が、真相を紐解くまでには至らない。朝日新聞のサンゴの件みたいに、共同通信の記者の「やらせ」ではないかという指摘はツイッターでもよく見られたが、折り目はその直接的な証拠にもならない。ただ、不可思議なのは間違いない。
早川理恵子さんについて…パラオ、中国、そして日本
パラオの中国国旗の件について、ツイートをずっと流していたら、早川理恵子さんという方からご連絡を戴いた。
▲パラオの現地情報に詳しい方である。
▲『やしの実通信』というブログをされていて、こちらの情報が非常に面白い。
【謎の中国船、パラオで廃棄か? 】中国本土の旅行社所有である同船をパラオに運行してきた船員は飛行機でパラオを飛び立ったという http://t.co/qBQgHWVPtn pic.twitter.com/71UbmAQ5Sp
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 3月 25
【パラオの観光に異変 】『中国大陸からの観光客激増』中国人のマナーの悪さ。珊瑚を取る、道にゴミを捨てる、注意しても聞かない等等。そして、安いパッケージで来る中国人観光客は現地にお金を落とさない… http://t.co/M9T3wTgDMQ
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 3月 25
【パラオ、中国観光客は必要】有力な指導者4名が中国人観光客削減案を公聴会で反対。特に大統領の海洋保護区で削減する漁業収入を埋め合わせるために、観光収入は欠かせないと。また、海洋環境を破壊しているのは地元パラオ人ではないか、との意見も… http://t.co/iLs6z5DgDk
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 3月 25
▲パラオにおいて中国人観光客のマナーが悪いというのは日本でも報道されていたが、その他にも日本で報道されていない話があり、大変参考になった。4月から中国人観光客の航空便を減便するとの情報もあったが、パラオは反中一色で意見が統一されているのではなく、中国人観光客削減案に反対する有力者もいるわけだ。
【戦略的に重要なパラオ】パラオに民主主義を紹介したのは日本統治、という説もある。なぜか。日本の南洋統治は地元の伝統的首長家族ではなく、優秀な人材を取り上げ、育てた。よって今まで身分が低い人々が実力で評価され、社会のリーダーになれる… http://t.co/ox6lRt3orL
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 3月 25
【パラオの鯨 鯨のパラオ】長年捕鯨問題では日本支持を表明し、日本にとって頼もしい国パラオが、今年になって不支持に回る、と言い出し、大騒ぎになった。鯨だけではない、サメも保護、観光客からグリーンフィーなる環境税も取り立て… http://t.co/VsV2cOSlmr
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 3月 25
▲パラオが親日的だとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。そしてそのルーツを辿ると…
【矢内原忠雄著『南洋群島の研究』を読む(1) 】『日本とパラオは、国交20周年を迎えるが、戦争以前から関係があった』ナント、「士族授産金」が、即ち武士救済費用がそのきっかけ…日本ーパラオ、日本ーミクロネシアの関係は武士が作った http://t.co/TmQ4WrxJ3G
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 3月 26
▲1890年に旧幕臣の子息である田口卯吉が士族授産金を使って南洋開発をしたのが、日本とパラオの最初の接点であると言う。そこまで遡るものとは思わなかった。
私は常に中国の視点から、東アジアの問題や日本を見ていたりするので、太平洋の島嶼国から中国や日本を考えるのは、いつもとは真逆の視点で大変新鮮な体験であった。今後はこの視点を忘れないようにしようと思う。
日中の海洋戦略とパラオ
第一列島線での衝突が激しくなる最中、第二列島線の要衝であるパラオを巡り、日中の外交駆け引きが展開されている…そういう時に、海上保安庁の巡視船まで引っ張りだして、天皇陛下が行幸されることを思うと、胸が熱くなってまいりました @syge3 pic.twitter.com/qhl3vy8bW6
— 黒色中国 (@bci_) 2015, 3月 26
ツイートでも書いたが、パラオは第二列島線の要衝である。中国が、この島嶼国と正式な国交を持たないことを歯がゆく思っているのは想像に難くない。先に紹介した早川さんのブログ記事でも、謎の中国船が廃棄されていたりで、何やら中国が暗躍しているのはわかる。今回、天皇皇后両陛下がパラオを訪問されるのは、
戦後70年に当たり,戦争によって亡くなられた人々を慰霊し,平和を祈念するため,また,我が国とパラオ国との友好親善関係に鑑み,天皇皇后両陛下に,同国を御訪問願うことといたしたい。
宮内庁発表ではこういうことになっているのだが、中国が第二列島線に魔の手を伸ばしつつあるのを防ぐのが、ご行幸の真の目的ではないのか…とも思える。
早川理恵子さんのブログを読めばわかるのだが、パラオはその地政学的な条件から、日米中台が複雑に絡んでおり、人口2万の小さな島嶼国であっても、その政治状況は決して単純ではない。中国国旗の件は、国旗が消失した今となっては、真相は闇の中であるが、日中の海洋戦略が激しく衝突する中で発生した象徴的な出来事ではないか…と思うのである。