黒色中国BLOG

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新疆南西部の漢民族が当局から受け取った「十必備」の通知とは?

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 日本に亡命中の中国人漫画家、「変態辣椒」さんをツイッターでフォローしているのだが、先ほど上掲のようなツイートがあった。新疆ウイグル自治区にいる漢民族が受け取った「通知」らしい。「十必备」とは「十必備」つまり、「10の必ず備えること」である。以下、その内容を訳してみる。

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まず冒頭に見える「叶城」とは「葉城」。これは「カルギリク県」のことで、新疆南西部にある町の名前である。以前からこの地域は「テロ」が多いことで知られている。この通知は、そこに住む漢民族の安全を確保するために、「十必備」の実施を要求するものである。

(1)集まって住むこと。

原文は「集中居住」…一人暮らしなどでいると用心が悪いので、集まって住みなさい、ということだろう。

(2)防犯ドアを取り付けること。

原文には「防盗門」とある。これは侵入を防ぐための全鉄製のドアで、かなり厳重なロック機能がついているもののこと。通常、二重扉になっている。一般人には破壊不可能である。

(3)窓に鉄柵を取り付けること。

原文には「防盗窗」とある。「窗」とは窓のこと。

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▲中国の建物の窓にはこのような鉄柵が取り付けられていることが多い。この鉄柵のことを「防盗窗」というのである。

(4)「警民連絡カード」を発給する

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その地域を担当している公安分局、派出所、警官への連絡先が書かれた名刺である。QRコードが描かれたものや、QQ(中国のチャットサービス)のアカウント、担当警官の顔写真が印刷されたものなのもある。これらのカードを用意しているので普段から持っておいて、緊急時の連絡を密に取りなさい、ということなのだろう。

(5)防暴工具を配備せよ

別の言い方をすれば、「警用装備」…つまり警備用の道具のこと。これはヘルメットや盾のような防御用もあれば、刺又のような捕獲器などを指す。

(6)犬を飼え

マルチーズとかプードルでも良いのだろうか…。ゴールデンレトリバーなどは性格が良いから、侵入者とすぐに仲良くなりそうである。実際のところ、私の中国の知人の近所の家は、番犬代わりにゴールデンレトリバーを飼っていたが、人懐っこくて誰とでもすぐに仲良くなり、侵入者が与えた睡眠薬入りの餃子を食べて、ぐっすり眠り込んでしまったので、番犬としては何の役にも立たなかった。

(7)非常ベルを取付けなさい

(8)住居を壁で囲い、院門をつけなさい

「院門」とは寺とか城の両開きのしっかりした門のことらしいのだが、住居を壁で囲った上で、出入口はそういう頑丈な扉にしなさい、ということなのだろう。

(9)監視設備を取付けなさい

監視カメラや、赤外線感知センサーなどのことだろう。この手のものは中国では安く手に入るし、一般の住居でも広く普及している。私も香港に住んでいた時には、大陸で買ってきたこの手の装置を取り付け、家の電話につないで、侵入者があれば警報が鳴り響き、ケータイに自動連絡するようにしておいた。

(10)消化器を配備しなさい

(1)から(9)のように厳重な警備を用意しても、放火されてはどうしようもない。消火設備を用意せよ、ということだろう。

★ ★ ★ ★ 

「備えあれば憂いなし」とは言うものの、ここまで念入りになってくると、これは住居というよりも要塞か…まるでビン・ラディンの隠れ家みたいな状態である。これが新疆南西部に住む全ての漢民族に通知されているということは、その地域において漢民族は普通の生活ができるような状態ではない…ということである。中国政府は、当該地域の漢民族に「備え」を要求するよりも、その根本原因である少数民族の不満を前向きに解決すべきではないか…と思われる。

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