【写真4枚】『上海ワールドフィナンシャルセンターの周辺に亀裂』上海の地盤沈下は以前より問題となっているが、こうした亀裂も走っているのは不気味…上海は多くのビルが立ち並んでいる。ビルが重すぎるために地面が悲鳴を上げているのか? http://t.co/jdgFlqsf #MPJ
— 黒色中国 (@bci_) 2012, 2月 21
「上海ワールドフィナンシャルセンター」とは、森ビルが上海にたてた高層ビルで、「上海ヒルズ」と呼んだりもする。中国語では「上海環球金融中心」という。
前々から言われていたことだが、上海の発展を象徴する浦東の陸家嘴周辺(「あの」ヘンテコなビルとかタワーがあるあそこらへんですな)というのは、地盤に問題がある?らしい。上掲ツイートのリンク先では「上海は多くのビルが立ち並んでいる。ビルが重すぎるために地面が悲鳴を上げているのか?」とあるが、そもそもあの「地面」はどんなところだったのだろうか?こういう場合は、昔の地図をみると、何かがわかるのではないか…と思って、引っ張り出してきて、現在の姿と比べてみた。
▲クリックで拡大できます。
(上)グーグルマップで見た上海・陸家嘴周辺。
(下)1932年発行の地図での上海・陸家嘴周辺。
●赤丸は上海ワールドフィナンシャルセンターの位置。下の古地図の方では、地形から判断して、大体の場所の見当をつけてみた。
1932年発行の地図でみると、川か水路がたくさんあって、上海ワールドフィナンシャルセンターがあるのは丁度その水路に囲まれたところである。
建設予定の土地は最悪のロケーション
(前略)…まず第一は、森ビルは金融センタービル建築予定の土地を、一九九四年に市当局から借りるのだが、実はこの場所は一年間に五~六センチも地盤沈下しつつある最悪なロケーションであるということだ。これを報じたのは他ならぬ地元上海の『チャイナデイリー』だ。しかもこの事実を、森ビルの関係者は知らなかった。
地盤の問題はこれだけではなかった。一九九四年に工事を担当した日本のゼネコン大手の清水建設は、地下を掘るたびに水が上がってきたため、難工事を余儀なくされたという。対策として地盤を固めるため、杭を相当数、打ち込まざるを得なかった。事前調査に手抜きがあったのだ。
…以上の引用は、青木直人氏の著書『北京五輪後に何かが起こる』の156頁にある記載である。
そもそも、浦東のあのあたりはどうやって出来上がった土地なのか?
■陆家嘴-地区历史(百度百科)
明永乐年间,黄浦江水系形成,江水自南向北与吴淞江相汇后,折向东流,东岸形成一块嘴状的冲积沙滩。
明王朝の永楽年間といえば、西暦1403年から1424年の間である。今から約600年前のことだ。
上海の真ん中を通る「黄浦江」は、このように南から北に流れて、上海ワールドフィナンシャルセンターがある陸家嘴のあたりで曲がって東へと流れる。この流れが東に変わるあたりで、土砂が堆積して、くちばし(嘴)状になった地域が、「陸家嘴」というわけだ。
だから、あまり地盤がしっかりしていないのか。水流が運んだ土砂の堆積した場所なのだから、掘れば水が出るのも、1年間に数センチずつ沈むのもわからないでもない。
当方は土木建築の知識は皆無なのではあるが、想像するに、砂浜に強固な基礎を入れて、巨大建造物をたくさん作ると、その間にある道路になんらかのストレスがかかるのではないか。たぶん道路には充分な基礎工事をしていないのではないか…と考えるのである。
地震とまったく無縁ではない上海市
ただ、一応現代の建物なのであるから、それなりに基礎工事もやって、何とか安全対策もされているのではないかと思う。高層ビルがすっぽり土砂に埋まったり、倒れたりすることは無いのではないか…と信じるほかない。でも、地震があったらどうなるのだろうか?そもそも上海に地震はあるのか?
上海市は中程度の活動を示すプレートの上に
上海市が位置する長江下流エリアは、まったく地震がないわけではない。古くは上海市の行政区域内で、1624年にM4.75程度の地震が発生している。上海市一帯は、長江下流から黄海にかけてのプレート上にあるために、やはり地震は発生しているのである。
さらに、上海近郊まで範囲を広げ、半径300キロ圏内まで広げてみれば、これまでにM5以上の地震が、記録の上で残っているだけでも46回、M6以上の地震も16回発生している。このうち、最も強かったのが1846年8月4日に発生したM7の地震といわれている。
また、上海市に影響を及ぼした地震についてみてみると、1970年以降、14回体に感ずる地震が発生している。最近では、1984年に南黄海エリアでM6.2規模の地震が発生しているし、1990年には常熟と太倉の境界付近でM5.1規模の地震が発生していて、いずれも上海に揺れなどの影響を及ぼした。1996年の地震では、震源地は長江沖合いででM6.1だった。上海に大きな被害はなかったものの、めったにない地震だけに、パニック状態になった市民も少なくなかった。
そのため、上海市の重要な建築物の建築に対して、地震の影響を考えた設計が行われている。有名なのは、地震による安全性を考えて、浦東国際空港が元々の建設予定地よりも南に4キロ移動された話もある。そのほか、上海市南匯沖合いに最近作られた洋山港、黄浦江をくぐる延安トンネルなど各種トンネルも、地震に対する検討が行われているそうだ。
意外に、上海付近でも地震はあるみたいだ。
でも、地震による安全性を考えて、空港を南に4kmずらしたのなら、陸家嘴の高層ビル群だって、もう少し別の場所にした方が良かったのではないか…とも思うが、たぶんそれにはそれなりの理由というものが存在するのであろう。それはまた、別の機会に探ってみようと思う。