黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

ファストリ柳井氏の新疆綿&ウイグル問題「ノーコメント」の件

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朝から本件が炎上してますね。私からすると意外だったのですが。

ツイッターでもちょっと触れましたけど、長くなりそうなので、こちらでも書きます。

【目次】

中国・環球時報の記事

▲こちらはレコチャイが作った日本語訳の要訳。元になっているのは環球時報の記事ですがが、

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▲こちらを見ればわかるように、去年8月の段階で既にユニクロ製品には新疆の工場への委託がないことが会社の声明としてだされており、北京在住の「ユニクロの大ファン」も「新疆綿」の表示がなくなった…と言っております。

1つ気になるのは、新疆に工場がなくても、新疆綿の使用は否定してない…ということですか。中国では新疆以外でも綿の生産をしているので、それを利用しているのか、外国から綿を持ってきているのか。その点、今現在確認できません。

記事はそれから

また、「記者が調べたところ、かつてセールスポイントとして販売されていた新疆綿製品はすでにユニクロの公式サイトでは見当たらなくなっている」と指摘したほか、「本件についてユニクロに問い合わせたものの、現在のところ回答が得られていない」と報じている。

 と続きますので、ここをまとめなおすと、

  • 去年8月に新疆綿&新疆生産品不使用の表明…という点ではH&Mと同じ。
  • 現在の騒動において新疆問題を問われれば会社公式の回答は「ノーコメント」

H&Mの二の舞は避けたいのでしょうね。でも、日本側から批判されることになったわけです。

ファストリの工場と素材に関する資料

アップルのサプライヤーリストみたいなのあるかな…と思って探してみたらありました。

■ファーストリテイリング主要縫製工場・一部工程外注先工場リスト

https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/labor/pdf/FRCoreSewingFactoryList.pdf

■UNIQLO and GU Core Fabric Mill List ユニクロ・ジーユー主要素材工場リスト

https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/labor/pdf/UniqloGuCoreFabricMillList.pdf

最近、株主対策とかでこういう資料の公開が必須になっているのですね。

ザッとみたところ、中国(China)はたくさんあっても、新疆(Xinjiang)はありませんでした。

新疆綿をどこかの流通経路で「ロンダリング」して、新疆以外の中国工場に持ち込んで…というのはあるのかなぁ…わかりませんけど。

▲こちらの記事を見ると、

新疆の綿生産量は、2020年には516.1万トンに達し、中国の綿総生産量の87.3%を占める。新疆綿は、生産量、収量、作付面積、商品調達量のいずれにおいても中国で26年連続トップであり、世界の重要な綿生産地にもなっている。

 ということで、中国が生産する綿の中でも、新疆綿は87.3%だけど、それでも12.7%は「新疆以外で生産された綿」があるわけです。

▲ファストリのページに戻りますが、いろいろ監査をやってますね。

ファストリは政治団体でも人権団体でもないので、新疆綿問題やウイグル問題への言及を直接しないものの、会社の監査において、新疆絡みは忌避されるべきもの、と判断されているみたいです。

「こんなもの信用できるか!」

という人もいるかも知れませんが、この手の監査は株主とか投資家に向けてやってるものでして、違反が発覚すると、大打撃になるので、どうでしょうね?隠蔽はあるのでしょうか。

特にファストリを擁護する気もなく、何か「アラ」があればと思ったのですが、とりあえず基本的な公開情報を見る限り、全然問題はみつかりませんでした。

ちょっと気になるので、あとで調べなおそうと思います。

もし、何か「証拠」をお持ちの方がおりましたら、ご一報ください(^^)

微妙な翻訳の違い

最初に紹介した環球時報の記事の日本語訳…原文と比較すると、一部抜け落ちている訳があったので、紹介しておきます。

▲こちらが原文ですが、

北京的徐先生曾是优衣库的忠实客户,他告诉《环球时报》记者,此前在优衣库购买了很多专门标注“新疆长绒棉”的背心,大概是从去年年底左右优衣库开始给相关产品更换包装,去除新疆标识,还进行了清货甩卖。这与优衣库发布公告的时间线相吻合。

▲こちらユニクロ大ファンの北京の徐さんのくだり。アンダーラインの箇所は、先の画像でもあげた

「これまで新疆綿と表示されたベストを何着も購入してきたが、昨年末ごろから新疆の表示がなくなり、セールも行われた。」

の箇所ですが、

  • 「昨年末ごろから新疆の表示がなくなり」⇒「大概是从去年年底左右优衣库开始给相关产品更换包装,去除新疆标识」

アンダーラインの部分が省かれています。

私も、翻訳をする時は大意が伝わればいいので、クドくならないように原文の一部をパスすることはあるんですけど、ここの部分は「関係する製品(つまり新疆綿使用の)の包装を変えて」という意味です。

徐さんの証言が本当だったら、ユニクロは去年の夏に新疆の工場への委託はないと声明を出していたけれど、実際には新疆綿を使用した製品の包装を変え、新疆の表示(タグ?)を取り除いたのでしょうか?

つまり、2021年の夏の声明以後も、在庫としては新疆綿使用の製品を抱えていて、2020年の末頃にそれらの包装を換えやタグ?を外して売り続けて、年末セールで棚卸しの投げ売りセール(清货甩卖)をやった…ということになのかな?

もしかしたら、同じ形のベストを途中(声明発表の夏以後)から、新疆綿以外の綿を採用して生産を続けて、北京の店頭でのその商品への切り替わりが去年末ぐらいだった…かも知れませんけどね。

それと、2020年8月17日のファーストリテイリングの声明というのが、いくら探しても見つかりません。そもそもの環球時報の記事が正確なのかも含めて疑う必要がありますけどね。

ユニクロが発行していた広報誌に新疆綿畑の情報を発見!

なんでも良いから関連情報が見つからないかと、中国のネットをサルベージしていたら、次のPDFを見つけました。

http://www.uniqlo.com/power_of_clothing/pdf/FukuNoChikara_14.pdf

▲こちら、ユニクロのサイトにアップされているものです。

最終ページの記載から、本号は2015年6月に発行されたものなのがわかります。

この中の15ページに

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▲こんな記載が(スクショは上掲PDFより)

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▲その下にこんな記載があります(同広報誌よりスクショ)。

ユニクロに新疆綿を納入していたのが「魯泰紡織株式会社」。では、この綿花畑は新疆のどこにあるのか?

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https://zjnews.zjol.com.cn/system/2014/06/18/020090345.shtml

▲こちらの記事の中に、新疆のアクス市にあるアワット県の党委員会副書紀と浙江省紹興市の援疆指揮部指揮長と党委員会書記がアワット県の「新疆魯泰紡績有限公司」を視察した…という記述があります。たぶんこれがユニクロと関係のあった魯泰紡績の新疆での工場なのでしょう。彼らの綿花畑もこの近くにあるものと考えられます。

ところで、アクス市のアワット県を調べると…

▲こちらの記事の表の中に出てきますね。

イステクラルTV(トルコ在住の亡命ウイグル人が運営するネットテレビ)の報道資料の中で、アワット県にも強制収容所があり、収容人数が「31547人」とあります。

この31547人が魯泰紡績の綿花畑で働かされているのを証明する情報は現在ありませんが、かなり「近づいてきた」気がします。

そして、山東省の魯泰紡績本社(Lu Thai Textile Co., Ltd.)は現在もユニクロの素材工場に掲載されています。

■UNIQLO and GU Core Fabric Mill List ユニクロ・ジーユー主要素材工場リスト

https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/labor/pdf/UniqloGuCoreFabricMillList.pdf

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ユニクロは現在、新疆との関連が一切ないようですが、「ノーコメント」で済ませずに、過去の取引において、どうだったのか、現在も取引が続いている山東の魯泰は、新疆の綿花畑をその後どうしたのか、現在本当に新疆綿は製品に含まれていないかを報告する義務があるのではないでしょうか。

魯泰紡織が新疆に立てた学校は5つ

▲百度百科(中国のウィキペディアみたいなの)に魯泰紡織の項目があり、その中に…

鲁泰在新疆援建5所希望小学,支持教育事业、推动边疆发展,透过责任与关爱,累计投入近2亿元用于“济困、支教、助学、赈灾、敬老、社区支持”,投资建设鲁泰体育广场、鲁泰大道、鲁泰文化路等社会公益活动。」

…との記載あり。「希望小学」は貧困地域などに、義援金で作られる小学校のこと。これは先にスクショで紹介した藤原英利さんのお話とも合致します。

丰收三场(豊収三場)は国有農場

先にあげた新疆魯泰紡織に視察云々の記事。文中に「丰收三场(豊収三場)」という言葉があり、これを見た時に「おやおや」と思いました。

「豊収」とは「豊作」という意味。「三」という数字にプラス「場」という感じで命名される農場って、昔の紅衛兵が開墾したとか、国有関係の農場に名付ける時の命名規則なんです。

▲ありました。豊収三場は元々アワット県の国営で、1965年頃に作られたもの。魯泰紡織は2003年から豊収三場に入ってますので、かなり前からここでの事業に着手していることになります。

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▲百度百科の豊収三場の写真は、魯泰紡織の技術研究開発センターになってますね。

▲場所の特定ができました。

魯泰豊収棉業公司

新疆维吾尔自治区阿克苏地区阿瓦提县309省道

近くにもう1つ同名の会社が見えます。 

アワット県には3つの強制収容所が

いろいろ調べていると、新疆の強制収容所問題で、アワット県はちょっと有名な場所なのがわかってきました。

▲こちらは2018年のRFAの記事ですが、この中にアワット県が出てきます。

内容は、国際監視団がやってくる前に、当局が強制収容所の外観を手直しして(有刺鉄線や監視カメラの撤去)、収容していた人々を他の施設へ移送し、強制収容所は3つあるけど、住民にもし尋ねられたら1つと答えるように指示していた…との内容。

アワット県の地図をみればわかりますが、そんなに巨大な町ではないので、ここで事業をしていたら、すぐに強制収容所の存在には気づいたんじゃないでしょうか。

【注釈】アワット県の表記について

魯泰紡績が新疆で工場と綿花畑を持っていた阿瓦提県は、中国語だと「アーワーティー」と発音し、英語だと「Awat」で、ニューズウィークの表記では「アワット」で、ウィキペディアでは「アーバード」になります。

どれが正確なのかは不明なため、本ブログではニューズウィークの表記を採用しております。

ユニクロの監査体制はどうなっていたのか?

以下の2つのページをザックリ読めばわかると思うのですが、ユニクロにはちゃんと取引先の人権や労働環境を監査する仕組みがあるのですね。

ユニクロが新疆綿を使用した製品の素材仕入れ先として魯泰以外の会社があるのかも知れませんが、とりあえず魯泰に絞ってもこれだけ色々出てきた。過去にユニクロは魯泰に対して、どんな監査をやってたのか、その記録は出てこないのかなぁ…と思います。

私は表に出られないので残念ですが、マスコミやジャーナリストの人が動けば、資料は出せるはずなんですけどね。

ポイントをまとめると、

  • そもそも新疆の魯泰とユニクロの直接取り引きはあったのか。
  • 新疆魯泰との直接取り引きが最初からなければ、新疆綿の取引は山東の魯泰経由で、ということになる。
  • 山東の魯泰とユニクロの取引はまだ続いているが、山東の魯泰がユニクロへ納入する素材に、新疆製が全くないと断言できるエビデンスはあるのか。
  • ユニクロは過去に魯泰へどんな監査をしてきたのか。
  • ユニクロは新疆の魯泰を調査したことはあるのか。
  • そもそも自社の広報誌で魯泰を取り上げて、そこに新疆農場の件が出てくるので、「全く知りませんでした」では通じないし、監査もしてないことはないだろう。
  • 「取引先工場のモニタリングと評価」を見ると、2015年からユニクロは、国際労働機関(ILO)と国際金融公社(IFC)の共同活動プログラム「ベターワーク」による監査も実施したり、公正労働協会(FLA)に加盟していたりする。2015年に何があったのか。それ以前のユニクロの監査体制はどうなっていたのだろうか?

このあたりを明らかにしてほしいところですね。

「中立」発言の問題点

今朝からツイッターで騒動になっていた、「中立」発言ですけど、この長いブログ記事をご覧になられた人にはわかると思いますが、

  • 「ウイグル問題は政治的」ではない。「政治的には中立な立場でやっていきたい」は結構なことだが、いま問われているのはファーストリテイリング、ユニクロが自社で定めた「サプライチェーンの人権・労働環境の尊重」を守っているかの問題。
  • 綿花について人権問題に関わることがあれば「即座に取引を停止している」…というのは当たり前で、その経過の説明…どのような監査結果に基づいて、取引を停止したのかを説明するべき。即座に取引を停止したからといって、それまでの取引がなかったことにはならず、取引停止は「免罪符」にならない。

私はユニクロ大好きで、たくさんユニクロの服も持ってるし、今回の件ですぐに不買しようとか、そんなことは考えません。でも、私が次に新疆へ行って、ウイグルの友人に会う時に、堂々とユニクロの服を着て行けるようにしてほしい。「ノーコメント」で逃げずに、本当のことを正直に話してほしいと願います。

ユニクロ帝国の光と影
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  • 作者:横田増生
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