黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

上海外食の変遷…菜市場メシの快楽

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穴蔵屋の焼きビーフン

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▲こちらは今から10年以上前…たぶん2006年ぐらいだったと記憶しているが、当時住んでいた家の近所でよく食べていた焼きビーフンである。

通りから少し階段で下がった半地下の店舗があって、そこは日の出ている間は明かりをロクにつけず、いつも薄暗いので、まるで穴蔵にこもっているかのようであった。店の看板もないので店名もわからない。だから私はこの店を「穴蔵屋」と呼んでいた。高齢の老人が調理し、孫らしき中学生ぐらいの女の子が配膳をする小さな店であった。

この店では看板どころかメニューを見た覚えもない。ただ、焼きビーフンだけしかない店だったと記憶している。いや、チャーハンはあったかな。そんなので商売になるのか…と思われるかも知れないが、上海でも郊外の小さな町だと、とりあえず間借りしてはいるけど、屋台同然の簡素な飲食店があったのだ。

大体、この手の「店」は、数ヶ月だけ商売をやって、ある日突然消えてしまう。商売が立ち行かなくなったのか、儲けて別の場所に店を構えたのか、たまたま数ヶ月だけ試しにやってみただけなのか。

こういう泡沫系の飲食店というのは、結構美味しいのが多かった。腕に覚えがあるから、ちょっとやってみるか…とばかりに、初期投資少なめで簡単な飲食店を始めるのだろう。一時期、そんな店ばかり探して食べていたことがあった。

写真の焼きビーフンは、ビーフンが程よい固さで、肉と野菜をたっぷり入れて、油多めで豪快に炒めたもので、立体感の無い撮り方をしたのでわかりにくいが、ビーフンが皿の上でてんこ盛りになっている。

出来たてのアツアツに黒酢をドバドバかけて、ラー油をたっぷりぶっかけて(写真の真ん中に見える赤いのがその唐辛子である)食べる。一皿5元。小さなスープもついてきたかな。目玉焼きをのせたら6元だったと記憶している。とりあえず、これで十分お腹いっぱいになれた。大の男が1食5元でお腹いっぱいになれるのが2006年頃の上海の外食事情であった。

それから10年以上経って…

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▲こちらは2017年に上海で撮影した「新疆拌麺」。たしかこれで13元だったかな。「安い!」と思われる人がいるかも知れないが、2008年ぐらいまでは麺の量が2倍弱で肉もたっぷり入って8元だった。2017年の新疆拌麺は、これ1つでお腹いっぱいとはならない。やはり北京五輪~上海万博あたりを契機に、物価があがって、この手の外食の価格もあがり、量も少なくなったよなぁ…と実感する。

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▲こちらは2018年撮影の新疆拌麺。メニューを見ると「18元」とあったので、たぶん量は昔並にあるんじゃないかと思ったが、期待はハズレて先の13元のものより少なかった(´Д⊂グスン

最近、上海で外食するのが楽しくない。特に、ちょっとササッと食べておきたい定食とか麺料理の類が、値段の割に量が少なめすぎて、落胆するばかりである。

中国の経済は発展し、物価も上昇しているわけだから、値段が少々高くなるのは仕方ない。ただ、同時に量を減らして、味も落としてしまうのはいただけない。

どこかに「未知のフロンティア」が無いものか…たぶん私が抱くような不満は、大多数の上海人が感じているはずだろうから、そういう客を狙った店があるに違いない…と考えて、ほっつき歩いていたら、ようやくその答えを1つ見つけたのである。

菜市場の「美食街」

中国ではアチコチに「菜市場」と呼ばれる市場があって、日本でいうところの「公設市場」だろうか。八百屋だの肉屋だの色んな店が集まっている。レストランの仕入れも、家庭の買い物も、こういう店にやってくる。最近はスーパーが増えてきたけど、やっぱり食材を買うなら菜市場でなきゃね…という中国人は少なくない。

私は中国で町の散歩をしている時に、菜市場を見かけたら、必ず中を覗くのだけど、こうした市場には、お惣菜屋とか屋台が併設されていたりで、簡単なレストランもある。日本だと公設市場のうどん屋さんみたいなものか。以前は単に買い物客を対象にした簡単な店だったけど、最近はちょっとこった店が少なくない。

最近は、ネットで注文を受ける出前専門の店が多いし、家賃も上昇しているので、客が店内で食事できる小さな店は衰退しつつあるのだけど、菜市場はいつでも客が多いし、家賃もそれなりに安いので(菜市場は朝は早くても、夜は8時頃に閉まるし、そもそも買い物客が来なくなれば商売にならないので家賃もあまり高くできないのであろう)、それなりに実力のあるレストランが、余裕を持って営業できるのではないか…と思われる。

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▲そうした中で私が見つけた店の1つがこちら。「羊肉粉」という麺料理があって、「粉」とはこの場合、ビーフンである。汁ビーフンの上に、羊肉やら羊の臓物を乗っけてくれる。出し惜しみがない、ドンブリにたっぷりのせてこれで30元である。

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▲ビーフンといっても、これはウドンみたいに太い。私が写真を撮っていると、店のオバちゃんが笑いながら「麺はお代わり自由だから好きなだけお食べよ」と言ってくれたけど、これだけたっぷりなのだから、お代わりは不要である。

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▲それに、たっぷりとラー油をぶち込んで食べる。臓物は新鮮なのを茹でたもので、ラー油を一緒に食べると美味しい。下に白菜が見えるけど、これは酸っぱい漬物で、ザクザク切ったのが、これまたタップリ入ってる。

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▲こちらは豚モツが入ったもので、麺は細め。こっちは確か20元しなかったかな。

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▲菜市場の惣菜屋の1つに揚げ物屋があって、そこはワラジみたいに大きなトンカツが名物である。注文してから揚げてくれるのが基本で、これを1つ購入。

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▲揚げたてを切ってもらって、さっきの麺と一緒に食べる。下味がしっかりしているので、ソースは要らない。中国人の好みなのか、脂身が少なめで肉質はちょっと固いが、揚げたての熱い内だととても美味しい。これで10元だ。

菜市場で新鮮な食材を仕入れて、それを菜市場の中で調理して、菜市場の客に出している。変なものを出せばすぐに噂になって商売にならないだろうから、品質も安心できる。最近上海にいる時は、普通のレストランに足が向かなくなった。「菜市場メシ」ばかり食べている。

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