黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

琉球独立派は中国のカイライなのか?そして琉球独立派の安全保障観について調べてみました

SPONSORED LINK

日頃ツイッターを見ていると、琉球独立運動をやっている人々は中国と関わりが深い…中国のカイライであるとか、中国の工作員であるというのが「常識」になっている。

f:id:blackchinainfo:20181122120103j:plain

以前からそれらの「常識」が疑わしいとは思っていたが、琉球民族独立総合研究学会の発起人であり共同代表を務めている松島泰勝氏の著書に、それらの「常識」を否定する旨の記述があるとのことで、内容を確認してみることにした。

読売新聞記者による「デッチ上げ」?

琉球独立論

琉球独立論

 

 ▲この本の166頁から「琉球独立と中国脅威論」という項目が始まる。

167頁から「琉球独立派=中国のカイライ」論への反論が始まる。

余談ですが、読売新聞記者・松浦篤の「沖縄独立論の影に中国あり-本土の人間が気づいていないその実態」と題するレポートが『中央公論』二〇一四年二月号に掲載されました。そこでは、私が中国の上海で開かれた研究会に参加した際『中国国際友好連絡会(友連会)関係者と接触したと見ている』という公安関係者の話を紹介しています。しかし、公安関係者が嘘をついているのか、公安関係者の話そのものを記者がでっち上げているのかはわかりませんが、そのような事実はありません。同レポートでは、琉球民族独立総合研究学会は中国の影響下にあるという事実無根の説が繰り広げられています。ジャーナリストが当然行うべき事実関係の裏を取るということさえせず、「琉球独立運動は中国が動かしている」と主張している。実に情けないことです。

 まさかとは思いますが、中国の上海に赴いたという事実だけで私を中国の手先と断定したのでしょうか。だとすれば、笑えます。この際はっきりと、言っておきましょう。私は研究に必要であれば、中国だろうと、アメリカだろうと、ロシアだろうと、北朝鮮だろうと、どこにでも出かけます。(167~168頁)

読売新聞の「松浦篤」とは如何なる人物なのか。ネットでは情報が乏しいので、これは後日調べることにするが、

▲読売新聞は、過去にこのような「誤報」を犯している。

このような情報に尾ひれがついて、ネット上で「琉球独立派=中国のカイライ」論が、独り歩きのかも知れない。

 現在の琉球独立に関する議論や運動は、国際法で保障された民族の自己決定権に基づいています。琉球独立運動は、日本や中国への帰属を拒否し、人間としての尊厳の回復を目指して、琉球人の琉球人による琉球人のための独立を軸としています。琉球は、中国からの支援を求めていません。(169頁)

▲ハッキリと、琉球が中国に帰属しないことを明言し、「支援」も拒否している。

 また、中国政府が琉球独立を認めて支援するということは、そのまま自国内のウイグル、チベット等の独立運動をも認可する矛盾に逢着します。

 かつてアジアのグローバルスタンダードであった中国と現在の覇権国家中国は、まったく異なった国家です。内に向かっては自国民の自由な言論を封殺し、ウイグル、チベットで侵略・虐殺を行い、漢民族を組織立って大量に移住させ支配下に置き圧政を敷く。外に向かっては、軍事力と経済力を背景に、フィリピンやベトナム、台湾に圧力を加える。そのような国の支配下に、独立した琉球が入ろうとするはずもありません。また中国が核心的利益と称し、併合を公言している台湾との連携を掲げる私たちの対中国観は明白です。

中国脅威論を掲げて琉球独立を否定する人々に、一言だけ申し上げておきます。琉球人は、それほど馬鹿ではありません。(169~170頁)

日本の保守派・右翼分子と似たような「中国観」を持っているわけだ。この箇所以外にも、本書では中国に対する辛辣な批判が見られる。

また、中国は自国から遠く離れたベトナムやフィリピンの海域まで自国の領海であると一方的に宣言し、軍艦を派遣して両国を恫喝しています。新たな覇権国として、中国は東シナ海、南シナ海の支配はもちろんのこと、太平洋進出という野心をもはや隠そうともしていません。(186頁)

これらを見る限り、琉球独立派は(少なくとも松島泰勝氏が属する琉独学会は)「親中派」でもないし、「お花畑」でもないようだ。中国が覇権国家であると断じているし、その脅威を直視し、全く過小評価していない。

 琉球独立派の安全保障観

では、琉球独立後の安全保障についてはどのような考え方を持っているのかを確認しておきたい。

同書第十一章「多角的な国際関係構築による安全保障」の中に、琉球独立後の安全保障について触れた箇所がある。

 国内に様々な矛盾を抱えながらも、中国は「富国強兵」政策を強力に推し進め、アジアの盟主としての地位を固めるだけでなく、アメリカと並ぶ二大覇権体制を目指しているようにも見受けられます。二〇〇八年に人民解放軍の幹部がアメリカの米太平洋軍司令官に「太平洋の真ん中に線を引いて分け合おう」といったのは、冗談ではなく本音でしょう。(231頁)

▲この「太平洋分割管理論」は、日本の保守派・右翼分子が中国脅威論を主張する際に、よく持ち出すエピソードである。

▲詳しくはこちらをご参照下さい。

ここまでを読むと、琉球独立派の安全保障に対する「認識」は日本保守と変わりない。ただ、安全保障への「対応」が大きく異なってくる。

琉球の安全保障を担保するのは、完全なる非武装中立しかあり得ないのです。中途半端な軍事力など、リスクでしかないということは誰にでもわかるはずです。

完全非武装の国家は、ブータンや太平洋島嶼国など、現実に存在しています。ただ、ブータンの場合実際には安全保障をインドに委託し、太平洋の島嶼国はそれを潜在的にではあれアメリカ等旧宗主国に依存しています。琉球の非武装中立は、こうした国々よりもっとラディカルなかたちをとらなければなりません。すなわち、政治的にも完全な中立を実現しなければならない。クラウゼビッツの『戦争論』の冒頭にある「戦争は政治の延長である」という至言はまさしく真理なのです(231~232頁)

 さて、それでは琉球は「防衛力」を持たなくてもよいのか。そんなことはありません。残念ながら、現在の主権国家は、その大半が自らの裡に「帝国主義」的感性を有しています。そうであるなら、琉球も当然「防衛力」を持たなければなりません。ただし、琉球の防衛力とは「力」ではなく「関係」であるべきでしょう。すなわち、完全中立を掲げ、相互を尊重した多国間との対等な関係構築。それこそが、琉球の防衛力となるはずです。(232頁)

 松島泰勝氏が主張する「防衛力」が、実現可能かはさておき、ツイッターやネットで「常識」となっている「琉球独立派=中国の手先論」は、かなり根拠の怪しい、「疑わしいもの」として見るべきなのは確かなようだ。