黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

なぜ中国漁船が澎湖諸島に来ると台湾は警戒するのか?

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中国漁船が強風を避けて台湾の「所管海域」に侵入した…との記事。例によって中国のネットの反応をかき集めて、台湾の「過剰反応」を面白おかしく扱っております。

でも、「台湾の歴史」を少しでもかじった人なら誰でも覚えていると思うのですが…「台湾侵略」は澎湖島からスタートするのが毎回の「定石」です。

この件を短くまとめておきます。

澎湖諸島の位置

澎湖諸島は台湾の西側にあり、大小90の島々からなり、総面積が141.052km²と言いますから、神奈川県川崎市(143.0km²)よりちょっと小さいぐらいです。

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▲澎湖諸島は地図でみるとこんな感じで、南北300kmに散らばっております。今回、中国漁船20隻が強風を避けるために接近したのは赤丸で囲った辺りで、この島は「西吉嶼」といいます。澎湖諸島の中でもかなり南の方で、以前は人も住んでいた島です(1978年に政府の指導により転居⇒廃村…だそうで)。

中国漁船としては強風を避けるため「たまたま」接近しただけなのかも知れませんけど、誤解されても仕方ないような場所を選んだわけです。

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▲台湾本当との位置関係で言いますとこんな感じ。澎湖諸島は台湾の西側にある自然の要塞みたいな島なわけです。

澎湖島から始まる台湾侵略の歴史

実は、歴史をさかのぼると、過去4回の「台湾侵略」は全て澎湖諸島からスタートします。それらを手短にご紹介しますと…

オランダの場合

1622年、オランダ東インド会社(The Dutch East India Company)はまず明の支配下にあった澎湖を占拠し、東アジアに於ける貿易拠点を築いた。その後1624年には明軍と8ヶ月に渡る戦火を交えた(en:Dutch pacification campaign on Formosa)。両国の間で和議が成立し、明は澎湖の要塞と砲台を破棄し、オランダ人が台湾に移ることを認めた。

鄭氏政権の場合

1644年、李自成の反乱によって明朝が滅亡し、混乱状況にあった中国に満州族の王朝である清が成立した。これに対し明朝の皇族・遺臣たちは「反清復明」を掲げて南明朝を興し、清朝への反攻を繰り返したが、1661年に清軍により鎮圧された。大陸での「反清復明」の拠点を失った鄭成功の軍勢は、清への反攻の拠点を確保するために台湾への進出を計画、1661年3月23日に祭江を出発、翌24日には澎湖諸島を占拠しオランダ・東インド会社を攻撃、4月1日には台湾本島に上陸し、1662年2月1日にはオランダ人の拠点であった熱蘭遮城を陥落させ東インド会社を台湾から駆逐することに成功した(ゼーランディア城包囲戦)。

 清朝の場合

澎湖海戦は台湾に拠点を置く鄭氏政権と中国の満州率いる清の間で1683年に行われた海戦である。清の将軍施琅は、澎湖の鄭氏軍を攻撃する艦船を率いた。両軍はそれぞれ200隻以上の軍艦を所有していた。鄭氏側の将軍劉国軒は、3倍数で勝る施琅より数で劣っていた。自身の旗艦が攻撃手段を失い台湾に逃げると、劉は降伏した。澎湖の敗戦は、鄭氏政権の最後の王鄭克塽が清の皇帝に降伏して決まった。

 大日本帝国の場合(乙未戦争)

1895年1月、日本の勝利(日清戦争)が確定的になると清はイギリス、アメリカを仲介として、終戦条約を打診したが遼東半島、台湾領有を目指していた日本は受け入れず戦争は続いた。3月下旬、終戦交渉が行われるなか、澎湖を日本軍が制圧した。

…というわけで、澎湖を取ってから台湾本島に進む…というのが「台湾攻め」の定石になっているわけです。

蔡英文政権になってから中国漁船への対応が厳しくなった?

最近…特に蔡英文政権になってから、中国の台湾に対する「圧力」は強く、

 ▲最近でもこんな感じですから、澎湖諸島に「強風を避ける」との事情でも、人が住める「無人島」周辺に20隻もの中国漁船が集結したら、時期が時期だけに、緊張する。厳しく対応せざるを得ないわけです。

▲ちなみに、こちらが今回の事案の大陸側での報道ですがこれによると、この2年間(つまり蔡英文政権になってから…ということでしょう)、台湾海巡部門は中国漁船に厳しく対応しているそうで、漁船の差し押さえ、ゴム弾の発射による中国人の負傷なども起きているそうです。

▲こちらは2018年8月に発生した大陸漁船差し押さえに関する報道。日本ではあまり出てこないニュースですけど、中国漁船の「越界」行為への反応を見るに、台湾はかなり「警戒」を高めているのではないかと思われます。

「台湾のやり方は厳しすぎないか?」という声は、大陸だけじゃなく、日本からも聞こえてきそうですけど、歴史的に考えてみると、台湾侵略は毎回、澎湖諸島から始まるわけで、特に今の中国は台湾侵略の意図を露わにしているわけですから、厳しい対応をするのも当然と思われます。

台湾―四百年の歴史と展望 (中公新書)

台湾―四百年の歴史と展望 (中公新書)

 

▲私はこの本を都合3回ぐらい読んだのですけど、短いなりによくまとまった名著と思います。 

  • 今日の発見 日頃、「親日台湾」が大好きな愛国的な皆さんには、この記事はほとんど無視されました。まぁつまらん記事だと言えばそうなのですが(´Д⊂グスン