黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

西沙諸島での中国軍爆撃機の離着陸は攻撃訓練か?

SPONSORED LINK

すでにツイートの方で書いちゃいましたけど、こちらでもまとめた上で、追加情報を掲載しておきます。

【目次】

海上突撃訓練?

 ▲こちらのニュースが日本でも伝えられておりますが、あらためて中国のネットを見ていると、これは「海上突撃訓練」ではないか?という情報がありました。

轰6K降落永兴岛只带半截导弹?这款神秘吊舱说明了一切!-腾讯网

▲こちらがそのネタ元になります。

 ▲大雑把な内容はこんな感じ。

H-6KとYJ-63Bについては以下のサイトが参考になります。

KD-63の母機となるH-6H爆撃機は1990年代末から生産され始めた巡航ミサイル搭載型で、胴体後部にミサイル-機体間のデータリンクに使用するレドームが装備されている。本機は主翼下に2発のKD-63空中発射型巡航ミサイルを搭載可能で、その為の機器を搭載するためにH-6Dと同様に23mm機関砲を全廃している。H-6Hは1998年12月に初飛行し、2002年11月にKD-63巡航ミサイルの発射実験に成功、2004年から中国空軍への配備が開始された。2005年の中露合同軍事演習「和平使命2005」では、H-6HによるKD-88の空中発射が実施され、60km遠方の目標に対して2発のKD-88を発射し、目標の破壊に成功した。

射程200kmのKD-63は、旧式化したH-6爆撃機に巡航ミサイルのプラットホームという新たな役割を与えることに成功した。KD-63のようなスタンドオフ兵器は、これまでの中国軍に欠如していた強固な防空体制下にある地域への打撃能力を与えることになり、空軍戦力の質的向上を果たすことが見込まれる。

 上掲の引用中の「KD-63」は「YJ-63」と同じです。

▲今回の件を伝える中国の別のサイトでは「作戦半径増大2000km」とあります。

另外,在中国空军官方发布的消息中,提到了“此次训练,师长郝建科驾轰-6K战机带头从南方某机场起飞,在既定空域完成对海上目标突击训练后,赴某岛礁机场进行起降训练”,也就是说,轰-6K从内陆机场起飞进行一定的作战训练后,又飞临南海岛礁进行起降训练,南海岛礁成为了其“中转站”。

▲中国空軍の公式発表によれば、今回の訓練は南方の某飛行場から離陸し、規定空域での海上目標突撃訓練を完成後、某島飛行場での離着陸訓練に赴いた…とあるそうで、「海上目標突撃訓練」が行われたというのは、公式発表なのですね。

それと、その後に

今后,如果在岛礁上增加加油及补给战,那么轰-6K的作战半径相比从内陆机场起飞将增加2000多公里,这将大大提升应对海上方向各种安全威胁的实战能力。

 …と続くのですが、ようするに島で給油を行えば、H-6Kの作戦半径は内陸の飛行場から出撃するよりも2000km作戦半径が増加する…というようなことが書いています。

なぜ永興島?

素人考えでは、海南島がすぐ近くなのに…そもそも永興島に最初からH-6kが配備されていればいいんじゃないの?と思いますが、先にこの点を整理します。

▲こちらを見ますと、

2014年机场跑道加长后,长3000米,宽50米,已达到空中客车A330、波音747及波音777起降的标准,但配套维护设施不足。

…とありまして、永興島には全長3000m、幅50mの滑走路があり、エアバスA330やボーイングの747、777が離着陸できるけど、メンテナンスの設備が不足している…ということです。

永興島はとても小さな島なので、大型の旅客機の着陸は出来ても、メンテナンスの設備はない…ということですね。だから、H-6Kを常駐させるのは無理なわけです。

▲永興島がどんな島なのかはこちらをご参照ください…っていうか、私が書いた2年半前の記事で、永興島に給油施設が作られたという情報がありますね。これってこの時から、爆撃機の給油の目的だったのかな。

そもそもあのH-6Kはどこから飛んできたのか?

最初に紹介した中国のサイトに

从央视报道的视频画面分析,这是驻湖南的空军轰炸航空兵某师的轰-6K轰炸机进行的海上突击训练。

CCTVの映像で分析すると、これは湖南の空軍の爆撃航空兵某師団のH-6K爆撃機が海上突撃訓練を行ったものである…とあります。

https://ja.wikipedia.org/wiki/中国人民解放軍空軍#編制(~2016年1月末)

▲こちらを参考に、H-6Kが配備されている湖南の空軍を探してみると…

広州軍区空軍

第8爆撃機師団(衡陽耒陽)
第22航空連隊(邵陽邵東) H-6K
第24航空連隊(衡陽耒陽) H-6K

▲こちらが出てきました。邵陽と衡陽は湖南省にあります。この2つは隣り合っているので、衡陽から永興島の距離を測定すると…

f:id:blackchinainfo:20180519202524p:plain

1186.28kmになります。

なぜこれで2000km以上の作戦半径が増えるのか…と考えるのですが、たぶん往復で2000km以上なのでしょう。永興島で給油してからどこかへ爆撃へ行って、戻りの時も永興島で給油して湖南に戻るから、湖南から出撃するのに比べて、2000km以上余分に余分に飛べる…ということなのでしょう。

f:id:blackchinainfo:20180519203625p:plain

▲H-6Kの航続距離は6000kmなので、湖南省衡陽から出撃した場合(青)、永興島から出撃した場合(赤)で半径3000kmの円を描いてみました。

実際には、積載される兵器の重量などで航続距離も変わるはずなので、この図の通りにはならないと思いますが、一応イメージを掴む参考としてお考え下さい。

永興島から出撃した場合、東南アジア全域をカバーできるようですね。

追記:「西安から出撃した」説について

その後、米軍事情報誌「ディフェンス・ニュース」から、使用された爆撃機は西安の爆撃機師団の所属という説がでてきました。

訓練を行ったのはH6Kの作戦行動半径(約3500キロ)から判断して陝西省の省都・西安を拠点とする第36爆撃機師団の所属機とみられるとしている。中国国防省は、爆撃機は「中国南部にある飛行場から出撃した」と主張していた。

f:id:blackchinainfo:20180522102444p:plain

西安から永興島の距離は1969kmなので、これだと「作戦半径増大2000km」というのが、スッキリわかりやすくなります。湖南からの出撃で往復で2千数百kmになるとか、そういう計算をするまでもなく、西安出撃説は極めて明確です。

以下、参考まで航空評論家の石川潤一さんのツイートを紹介しておきます。

中国航空戦力のすべて 中国のテクノロジーは世界にどれだけ迫っているのか? (サイエンス・アイ新書)