黒色中国BLOG

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【新型コロナウイルス肺炎】(9)『新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック日本語版』を解読する

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▲こちらで紹介した「対策マニュアル」の日本語版がついに公開となりました!\(^o^)/

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▲邦題は「新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック」になりました。

本記事では、日本語版のダウンロードの方法、医療関係者以外でもこの「ハンドブック」(以下このように略します)から学べること…について触れてみようと思います。

【目次】

(1)ダウンロードの方法

covid-19.alibabacloud.com

▲こちらをクリックして、下の方にスクロールすると…

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▲こんな画面が出てきます。「日本語」のタブをクリックし、「Download Standard Version」をクリックすればダウンロードが始まります。23.5MBのPDFファイルです。

内容の大半はかなり具体的な医療従事者用の情報なので、素人が見てもあまり意味ないかも知れません。それでも一応、全部目を通しましたけど、その中から一般の者でもためになるかも知れない情報を抜き出してみようと思います。

(2)浙江大学医学院付属第一医院とはどんな病院?

その前に、浙江大学医学院付属第一医院ってどんな病院なのか、カンタンに概要を見てみます。

▲中国語版ウィキペディアに記載がありました。

  • 1947年11月創立(第二次大戦後の中華民国時代。中華人民共和国建国の2年弱前)

  • 現在、浙江省最大の病院・医大。所在地は杭州。

  • 総面積10ヘクタールに2500床

    https://medimarl.net/tensyoku/?p=668
    ▲【参考】日本最大のベッド数を持つ病院は藤田保健衛生大学病院の1384床ですから、それを遥かに上回る規模です。

  • 2011年の来院患者は297万人。
  • 入院者数は9.64万人。
  • 手術数は4.42万人。
  • 職員数3754名。
  • その内の高級職及び専門家は470名。
  • 中国工程院院士2名が在籍
    ※中国工程院院士とは単純に言えば博士号より上の中国の最高学位。全員で857人しかいない。副大臣級待遇を受けられるそうです。

(3)『新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック日本語版』を(ざっくりと)読む

浙江省の感染状況

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▲こちらは本記事執筆時での浙江省の感染状況ですが、今までの累計感染者は1243名。これは湖北省(67801)、広東省(1448)、河南省(1275)に次ぐ中国第4位の数になります。それぞれ人口が違うから、感染者数だけの単純比較はあまり意味がないのですが、とにかく感染者数が多かったのは確か。

浙江大学医学院付属第一医院は今回特に重症患者を中心に受け入れ、このハンドブックの編纂に至るまでの約50日間で104名の治療にあたり、其の内の重症・危篤患者数は78名。

そうした中で、

  • 医療スタッフ感染者 ゼロ
  • 感染患者の診断見落とし ゼロ
  • 危篤患者死亡 ゼロ

という3つの奇跡を成し遂げた医療機関だそうです。

確かに先程挙げた感染者数の多い省と比較しても浙江省の死者は少なく、

  • 湖北省の累計死者数…3169名
  • 広東省の累計死者数… 8名
  • 河南省の累計死者数…22名
  • 浙江省の累計死者数…1名

浙江省は感染者が多い割に、死者は1名しか出ていなかった(この1名はよその病院での死者)わけで、浙江省全体で医療レベルが高い中で、更に浙江大学医学院付属第一医院は優れていた…ということなのでしょう。

目次を読む

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▲ハンドブックは3章+付録から構成されておりますが、これってガチの医療従事者向けマニュアルなので、素人が読んでもほとんど内容がわからないし、応用する機会もありえない内容になっています。特に、第二章の大半、第三章の看護経験と付録の全部はそのスジのプロでなければ読む必要はありません

このブログ記事を読まれている人は、「素人でも新コロの予防対策に役立つ知識はないのか?」と思われている人がほとんどではないでしょうか?私もそのつもりで、このハンドブックに注目していました。ただ、私は医学の知識もないので、コレを読んでも大半は理解できませんでした。

ただ、それでも読んでみたら、それなりの「気づき」はありました。それを書き出すと次のようになります。

隔離エリアの管理(1頁)

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▲ここは読んでいて非常に興味深いところでした。医療機関には独立した発熱外来を設け、人の流れを「3ゾーン2ルート」の原則で管理し…って、これを読んでいたら、我々日本人としてはダイアモンド・プリンセス号のことを思い出しませんか?それと、全身鏡を設置せよ…というのは、確か私が見ていたCCTVのニュースでも、作業中に防護衣が破れて、それを発見した同僚が応急処置で穴を防いだ…というシーンがありました。または、着衣の際に同僚同士で確認し合う…というのがあって、それぐらい注意深くやらねば感染を防げない…ということなのですね。

COVID-19の疑似症例スクリーニング基準表(2頁)

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▲このハンドブックによく出てくる「核酸検出」とは、日本で言うところのPCR検査のことです。PCR検査については、どのような基準で検査するのかしないのか、日本でオオモメしましたけど、この表はその判断をする際に用いられるものです。日本だと初期に、発熱や呼吸器症状があっても、湖北省や武漢に行ってない、そこから来た人と接触がなければ、検査も受けられない…という状態が続きましたが、こちらの表を見ると「感染症の病歴」がなくても、臨床的特徴が3つ当てはまれば、疑似症例として認められるようになっています。

それと「感染症の病歴」のクラスター感染の条件が「限られた範囲内で発熱もしくは呼吸器症状またはその両方がある患者が2人以上発生した」となってますね。この点、日本ではどうなってるんだろう?別に検査で陽性の人でなくても、発熱か呼吸器症状がある人が2人いればクラスター感染にカウントしてしまうわけです。

COVID-19関連の個人防護管理(5頁)

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▲今回の新コロ騒ぎにおいては、CCTVのニュースをツイッターでよく取り上げましたが、その中で気になっていたのが、防護装備の違いには、どんな理由があるのか?ということ。カンタンなマスクだけの人もいれば、ゴーグル・防護服…上から下まで完全装備の人もいる。私のツイートを見たネット右翼から、防護装備がイイカゲンだ!というツッコミもあったりして(私に突っ込まれても困るのですがw)、その理由を知りたかったのですが、作業に合わせて3段階の防護レベルを設定されていたわけです。

隔離病棟環境消毒プロセス(8頁)

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▲こちらは参考になりました。ようするに感染予防のための消毒・清掃の方法です。

日本のテレビやネットでも再三、塩素系漂白剤を使って消毒液を作る方法が紹介されてますね。医療のプロも同じように塩素系の消毒液を使用しているわけです。

https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/uploaded/attachment/3048.pdf

▲こちらは広島県福山市が公開している塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムが含まれる)を使った消毒液の作り方。これを参考にして下さい。ただ、福山市のPDFで出てくるのはあくまでも「家庭用」です。

単純に説明すると…

  • 高濃度の次亜塩素酸ナトリウムが人体に触れるのはヤバい
  • だから用途に合わせて高濃度と低濃度の2種類を作り、使い分ける
  • 高濃度消毒液は0.1%の濃度
    (水1リットルに対し次亜塩素酸ナトリウム1g=1000mg)
  • 低濃度消毒液は0.02%の濃度
    (水1リットルに対し次亜塩素酸ナトリウム0.2g=200mg)

ただ、福山市のこれはあくまでもノロウイルス用のものでして、浙江大学のハンドブックで使われている塩素系消毒液は高濃度(0.1%)からのスタートです。

▲塩素系漂白剤を使わなくても、次亜塩素酸ナトリウムだけのものが販売されてます。マスクやハンドジェルは買い占め・転売で高騰してますが、こういうものに手を出す人は少ないようで、今でも安価に購入できます。

それと、8頁の「物体表面の消毒」の3番目

拭くときは、きれいなところから汚れているところまでの順に従うべきである:まず接触の少ない物体表面を拭き、それからよく接触のある物体表面を拭く(一つの物体表面を拭き終わるごとにウェットティッシュを交換する)

▲ここは重要ですね。私は今まで汚れの目立つところから先に吹いてましたが、それだと二次付着(先に汚れがヒドイところを拭いてしまうと、後で拭くキレイなところに先程の汚れが付着する…ウイルスは目に見えないから見た目にはわからない)があるわけです。

8頁の「空気消毒」に出てくるプラズマ空気消毒装置は、日本で一般向けに売られているプラズマクラスターでも同等の性能があるのかは不明。皆さんの自己責任でお調べ下さい。

紫外線ランプ」は調べてみると、日本でも消毒用のものが一般向けに販売されておりました。 

▲しかも意外とお安いのですね。ブログ執筆時点で¥998+¥301(配送料/取扱手数料)となっております。

▲マスクなどの小さいものはこういう減菌ボッックスに入れて紫外線照射できますが、前掲の紫外線ライトを使われると大きなものや、「空気」も消毒できるものと思われます。 

* * * * *

日本では感染の疑いがあってもなかなか病院で診てもらえなかったり、自主隔離を求められますから、家庭や職場などの消毒の際に、これらの知識を応用できるかと思います。 

COVID-19患者の血液・体液・嘔吐物などの流出処理プロセス(9頁)

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▲こちらは、血液・体液・嘔吐物の処理方法。家庭内で感染者が出て、嘔吐をした時などにこの知識は使えるわけですが、ここで使われる塩素消毒液は濃度が高いので、くれぐれも取り扱いには注意してください。

ちなみに1000mg=1gです。とはいえ、塩素系漂白剤や市販の次亜塩素酸ナトリウムは100%の溶液ではないので(ここ要注意)、容器に書かれているパーセンテージを参考に自分で計算してちゃんと濃度を管理してください。

COVID-19関連の感染性織物消毒プロセス(12頁)

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▲カンタンに申し上げて、これは感染者の病室やベッドに使われている布類を如何に消毒するか…ということ。これは、家庭内でも役に立つ情報です。

ようするに、衣類と寝具とカーテン(これは病室のベッドカーテンで、一般家庭のカーテンだとベッドから遠いため、同じに扱うかは考えどころですが)と、部屋を掃除する時に使う布製のモップをどうやって消毒するのか…ということ。

つまり、

  • 洗濯物を収集する時は袋に密閉しろ
  • 非感染者の洗濯物とは分けて洗濯しろ
  • 洗濯には塩素系消毒剤を使え(これは塩素系漂白剤で代用できるでしょう。ただ、塩素系漂白剤は入れすぎると衣類に穴があいたり、破れやすくなるので要注意)
  • 90度のお湯で30分以上洗え
  • 洗濯物の輸送に使った器具は消毒しろ

となります。

調べてみますと… 

 ▲こういうものがあるのですね。しかも安い。この分野に転売屋は手をつけていない。

病院用ハイター 5kg         
 

▲病院用もありました。こちらは洗濯用じゃなくて、器具の消毒用ですけど。

業務用も病院用も含まれる次亜塩素酸ナトリウムは6%。前掲の12%のボトルより薄いけれど量が多い(5リットル)ので、大量に使うなら業務用・病院用のハイターをゲットして、用途に合わせて使い分けた方が良さそうですね。

COVID-19関連の作業スタッフ職業曝露処理プロセス(13頁、14頁) 

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▲注目すべきは下半分の(7)のところ。このハンドブック、毎度毎度タイトルがややこしいのですが、この場合の「曝露」とはウイルスに接触したことを意味し、どのように対処するのか?ということ。我々が日常の新コロ予防としてここから学ぶとすれば、

  • 肌に触れた⇒拭いて消毒しろ
  • 目に入った⇒生理食塩水で洗い流せ
  • 鼻・喉に入った⇒喉はうがいして、鼻は綿棒にアルコールをつけて消毒しろ

ということです。そして「曝露」の基準ですが…

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▲こちらの上4つに定義があります。

1から3は、「触れちゃったら」ということですが、4が注意したいところ。

4)気道直接曝露:マスクを着用していない診断確定患者の1メートル以内でマスクが落ちて、口または鼻を曝露する。
(呼吸道直接暴露:在未戴口罩的确诊患者1米范围内口罩脱落,暴露口或鼻。)

 ▲言いたいことはわからんでもないけど、変な日本語ですね。一応、原文も引っ張ってみました。ようするに、マスクしてない感染者の1メートル内にいた時に、自分がしているマスクが外れちゃった…その状態を口と鼻の「曝露」とみなす…消毒の必要があるよ、ということです。これ、注意しなくちゃいけないのは、マスクをしてない感染者がクシャミや咳をしたとか、そういうのではなくて、ただ至近距離にいるだけでアウト!ということです。

日本人だと、人と会ってもハグや握手はあまりないので、その点はまだ安心できるけど、感染者の至近距離(1メートル)に近づくと、クシャミや咳がなくても、口(喉)と鼻の曝露はありえる…ということなのですね。だからマスクはした方がいいし、マスクをしていなければ、うがいや鼻の消毒をちゃんとやっておいた方がいい…ということなのでしょう。

ここで出てくる「ヨードフォア」がいわゆる「ヨードチンキ」のことなのかは不明。自己責任でお調べ下さい。ただ、

【第3類医薬品】明治うがい薬 120mL

【第3類医薬品】明治うがい薬 120mL

  • 発売日: 2016/04/01
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 

▲明治のうがい薬には「ポビドンヨード」が含まれており、これはヨードフォアに含まれるものらしいです。

▲ヨードフォアに関しては、こちらの「ヨウ素類」の項目をご参照ください。

COVID-19回復者の回復期の血漿治療(35頁)

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▲面倒な文章ですけど、5回読んでなんとなく理解したのは(重大な感染症に関するブログ記事なのに申し訳ないですが、私は全くの素人なんですw)、

  • 新コロの感染拡大初期には特効薬もなく治療法も確立してなかったから、死亡率が高かった。
  • でも、血漿を採取して、血漿治療を行うようになってからは、それで助かる人が増えた(かなりの要訳です)。
  • 血漿治療は他のアウトブレイクでも有用でWHOもオススメしてます。
  • 血漿提供者(つまり軽度の感染者で回復した人)が十分にいるということは、それを必要とする重篤患者にもメリットだよね(かなりの要訳)

…ということではないかと。確かに中国でも新コロ感染拡大の初期はバタバタ人が死んでたけど、あるところから回復する人が伸びた。その時に血漿治療の話がよく報道されていた記憶があります。

だから、感染者が激増することは悲しいことですが、それで血漿がたくさん確保できるので、それで救える人もいる…ということ。これは我々がすぐ使える知識ではないのですけど、新コロにはそういう面もあることを周知する必要はあるでしょう。

漢方薬による治療効果の向上(37頁)

▲新コロの治療には「清肺排毒湯」という漢方薬が効果ある…というニュースがあり、記事も書いておきましたけど、ハンドブックでも漢方薬は取り上げられております。

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▲ただ、処方まで書いてくれているものの、この処方が何と言う名前の漢方薬になるのかはわからないのですね。

唯一名前が出てくる「安宮牛黄丸」については次のような記事がありました。

▲ようするに、非常に高価で、ニセモノが多いようです。

以上、漢方薬に詳しい方はこれらの情報を参考にしてみてください。