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黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

映画『標的の村』で理解する沖縄の基地問題

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私は中国問題専門でもう7年以上、ネットで情報発信をしていますが、今年の夏から沖縄の諸問題も知るべきだろうと思い始めました。

正確に言うと、2013年の琉球独立総合研究学会の設立が表明された頃から、これは中国との関わりが深いことだったので、沖縄問題をウォッチングの対象にするべきだろうと考え、ツイッターで情報収集と発信を行い、琉球独立関連の書籍や情報に目を通すようになったのでした。

しかし、沖縄に関してツイートする度に、執拗な嫌がらせに遭いました。彼等に「配慮」して、ネットでこれらの情報を出すのは断念した経緯があります。

私は中国問題の延長で沖縄についてウォッチングしているだけだったのですが、沖縄の基地問題や独立が絡むことでは、明確に非難・攻撃する立場を持ち、中傷・罵倒するスタイルを伴っていないと、今のネットでは「賛同者」と見做されるようです。

政治運動」としてはそれが今の日本のネットの普通かも知れませんが、「観察者」として誹謗中傷は不必要にして、やってはいけないことです。

とはいえ、沖縄のことに触れなければ無事安泰でもなく、中国について情報発信しているだけでも、毎日のように嫌がらせはあります。なので、いっそ「配慮」はやめることにしました。

自分の知的好奇心に忠実に、知りたいことを知り、知ったことを他の知りたい人と共有する。当たり前のことをやろうと思って、今年の夏から、沖縄のニュースを毎日読み、ツイートするようにしたのです。

【目次】

高江では何が起きているのか

沖縄について知ろうと思い、最初に困ったのは、「高江」という場所で何が起こっているのかがわからない…ということでした。「ヘリパッド」なるものを作っているのはわかりましたが、それが何のためのものなのかわからない。

すでに沖縄にはたくさん基地があるのだから、ヘリパッドなんか新たに作らなくても、良いのでは。

もしくは、戦略爆撃機が使用する滑走路を新たに作ろうというわけではないのだから、ヘリが止まるぐらいのものなら、大した問題でもあるまいに…と思っていました。

しかし、今回の機動隊による「土人」発言をきっかけに、全国的に高江の問題が注目されるようになり、改めて何が起こっているのかを知りたいと思い始めて、ネットでの情報を探っている時にみつけたのが、『標的の村』というドキュメンタリー映画です。

『標的の村』とは?

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▲こちらが公式サイトへのリンク。

▲こちらは予告編です(2分7秒)。

このドキュメンタリー映画は、2013年に製作された作品で、尺は91分になります。

ただし、YOUTUBEで46分のものが公開されています。これはテレビで放映されたものみたいです。

▲こちらがテレビ版になります(46分)。

できれば映画版を観てみたいのですが、まずはテレビ版を観ることにしました。

この手のドキュメンタリー映画は、どうせ運動側に寄り添ったもので、政府と米軍を敵視し、こき下ろした、公正中立さを持たないプロパガンダだろう…と思っていたのですが、実際に観てみると、これがなかなかの名作です。46分で高江問題の歴史的経緯と現状を把握できる内容となっています。

これを観る人の中には「反対派が美化されている!」、「反対派に都合の悪い部分が隠されている!」「奴らは極左テロリストだ!」「中共工作員だ!」…と怒り出す人もいるのでしょうが、そういう「詳しい人」は、当然現地にも行って「高江の真実」を知り尽くした人なのでしょう。その人は自分の知見を自分で情報発信すればいい。私は彼等の自由を邪魔しません。

現地に行くこともできなければ、どのメディアから、どのように高江の問題を知ればいいのかわからない…という人にとって、この映画は理解の一助となると思います。

『標的の村』から見えてくること

最近となっては、あまり知られていない話になりましたが、私は一応「保守」です。日本を愛する日本人の一人です。たまたま中国に縁があったので、中国情報の専門ということで、ネットを中心に活動しています。これからの日本のために、中国の情報を広く収集して、よく理解しましょう…というのが私の目的です。

その延長で沖縄の基地問題の理解を深めるべく、『標的の村』を観たのですが、私がこの映画から学んだこと、素直に感じたままのことを、こちらに記しておこうと思います。

※念のため申し上げておきますが、以下は映画の内容に基づく感想で、2016年10月現在の事情を反映したものではありません。

1)高江を包囲するようにある米軍演習場

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▲演習場と村はフェンスなどで仕切られているものでもなく、民家のそばにひょっこり演習中の兵士が現れることもあるらしい。これには驚きました。住民の生活への影響はないのでしょうか。

2)ヘリパッドは高江を包囲されるように作られる

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▲集落を取り囲むように6つもヘリパッドを作って演習をやっていると、ヘリやオスプレイが集落に墜落することもあるのでは。安全性の確保は大丈夫なのか?それに…図上のは新設ヘリパッドの意味ですが、左下のが2つあるところは、集落側に近すぎるような…

3)民家から400mの場所に建設されるヘリパッドもある

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▲左下の2つのから400mの距離に民家があります。安次嶺(あしみね)さんとその家族が住んでいる家です。だんだんと心配になってきました…

4)安次嶺さんの近所のヘリパッドには年間1260回オスプレイが飛来する

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▲安次嶺さんの家の近所のヘリパッドではオスプレイ(MV-22)が年間1260回も飛来するそうです。

オスプレイの安全性についてはツイッターで見ていると、旧来のヘリよりも安全とか、危険性云々はデマとか言われてますけど、安全な航空機でも、年間1260回も近所に飛んでこられると心配は絶えないでしょう。

5)昔、「ベトナム村」というのがあった

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▲ベトナム村は「1960年代に沖縄の演習場内に造られたベトナム戦の襲撃訓練に使った村」だそうです。

6)ベトナム村の襲撃訓練には高江の住民が動員されていた

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▲このおじいさんが高江の人なのかどうか、映画の中では明確に示されていませんが

▲これらの情報を総合してみると、

  • ベトナム村」は高江の近くにあった。
  • 東村高江の住民が戦闘訓練に動員させられていた。

…というのは間違いないみたいです。

7)座り込みには効果がある

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▲高江のヘリパッド建設の反対活動で、よく車両の通行を妨害している「座り込み」を見かけるのですが、これって効果があるんだろうか?私はそれが疑問でした。

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▲1989年の恩納村で行われた「都市型ゲリラ訓練施設反対闘争」でも座り込みがあったそうですが、

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▲座り込みで米軍の計画を撤回させられたそうです。成功体験に基づく有効な戦術だったのですね。

8)資材搬入ではかなり危ないことをやっている

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▲反対する人々の頭上でクレーンによる資材搬入が行われています。反対する人は、作業を妨害するために、そういう危険な場所に入り込んでいるのでしょうが、それでも頭上で作業を敢えて続行するのは危険じゃないでしょうか。

9)対立しながらも人間としての交流がある

ヘリパッド建設の阻止を巡って、反対派と防衛局(と思われ)の人たちが激しく対立しますが、

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▲押し合いをする内に防衛局の人(と思われ)のお腹に触れた、安次嶺さんがお腹をさすりながら、「ダイエットした方がいいな(笑)」と言って、防衛局の人とお互いに笑みを見せるシーンがありました。

ツイッターだと、反対派は血も涙もない極悪非道のプロ市民か中共工作員で、極左過激派テロリスト…ということになっていますので、憎悪に狂って絶叫ばかりしているのかと思いましたがそうじゃなかった。

反対活動を通じて、お互いにしょっちゅう顔を合わせているから、どこかで情を通じるところもあるのでは。こういうのって、報道でもツイッターでも出てこない。

※ ※ ※ ※ ※

ここまでの作品の流れは、現在の状況を説明しながら、歴史的経緯について触れ、反対闘争に展開し…というものですが、この「お腹スリスリ」のあたりから、作品の本題に入ります。この作品は単なる運動の記録ではありませんでした。運動を通じて向き合う、違う立場の人間の「心」にカメラが迫ります。

10)沖縄人の警官が反対運動を取り締まるのには限界がある

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▲作品終盤のクライマックス、普天間基地のゲート封鎖で、反対派の女性が警官隊に向かって半泣きで「何十年こんなことしてるウチナンチューは!沖縄の県警やろが…」と諭すシーンがあります。

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▲「ウチナンチューばっかでこんなしてるんだよ。何年こんなこと続ける!」と反対派の女性は諭し続けますが、警官たちはずっと目を伏せて気まずそうな顔をしている。反対派の女性の目を見ることができない。反対派の半泣きの呼びかけに動揺している。それは、警官たちが立場を違えども同じ沖縄人としての心を持っているからではないでしょうか。

そして現在…「土人」「シナ人」発言の後

ツイッターで沖縄の基地問題を見ていると、「プロ市民が」「極左テロリストが」「中共工作員が」という話ばっかりで、機動隊員は何が何でも正義の味方。たまに暴言があっても、反対派の方がもっとヒドイことを言ってる、やってる…というツイートが多く目につきます。

私は、そういう情報も一面の事実であったりするんだろう…と思いつつも、そこにいる人々の気持ちは一体どうなのか気になりました。アイツらは悪い、アイツらはヒドイという悪口雑言ばかりで、人間が見えてこない。

私は、中国関連のネガテイブな情報を発信しつつも、中国人の友人がいて、実際の中国をたくさんみてきたので、他の人の現実から乖離した誹謗中傷、中国悪しかれのヘイトスピーチ、中国に一度も行ったことがない人の「シナチャンコロ」論を聞かされるたびに、「それは違う」と思い続けてきました。今の日本で蔓延している「シナチャンコロ」論は、中国人を血の通った人間として扱わず、やっつけるべき非人間としてみている。

今のツイッターで蔓延している沖縄の基地問題関連の発言は、そういう「シナチャンコロ」論と似通っている。「反対派は日本人じゃない」、「アイツらは人間じゃない」、だから「叩け」、「潰せ」、「やっつけろ」と言っているように聞こえる。

『標的の村』は反対派側に寄り添った内容なので、公正中立とは言えないかも知れない。でも、反対派の視点で問題の概要を紹介しながらも、最後は基地を巡って対立する双方の人間性を描いている。

この作品を全肯定して、「基地問題の真実はこれだ!」と言い切るつもりはありません。私は全く基地問題に詳しくないし、理解のための1つとして、この作品を観たに過ぎません。

でも、この作品を観ることが出来て本当に良かった。

これをきっかけに沖縄問題について理解を更に深めたく思います。

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