【黙祷】矯大羽氏逝去https://t.co/1Il9i02Umn
— 黒色中国😷 (@bci_) 2020年3月20日
いまウィキペディアを見たら、「2020年2月17日逝去」とありました。
以前お店に伺った時に、大変歓迎していただきました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます🙏 pic.twitter.com/NYfP3oO4jI
矯大羽さんは、中国を代表する有名な時計師です。私は彼と面識があり、2014年にセントラルのお店を再訪した際、ご家族の皆さんからも大変親切にしていただいたので、非常に思い出深い人でした。
脳溢血に加えて、痛風がひどく、時計師との活動を再開することは不可能で、店に出てくることもままならない…と伺っていたので、再会はあきらめておりましたが、こんなに早く亡くなられたのは非常に残念です。
私が彼と会った時に、他にも日本人の来客は多く、日本のファンがいる…という話をされておりました。たぶん雑誌で紹介された影響でしょうか。
そうした「矯大羽ファン」の皆さんのために、私の過去の関連ツイートを再構成し、「追悼記念記事」をお送りしようと思います。
【目次】
そもそもの始まりは、あの有名な時計サイトから
▲香港に住んでいた頃、腕時計にハマって、このウェブサイトの更新をいつも楽しみに見てました。当時はスマホもタブレットもないので、プリントアウトして持ち歩いていたぐらい。隅々暗記するぐらい繰り返し読んだので、私の腕時計趣味の教科書みたいなサイトです。
このサイトで香港の「天儀軒」という時計屋さんを知り、実際に足を運んだのが2005年か2006年頃だったか…ものすごい大歓迎を受けました。2時間近く話し込んだかな…矯大羽さんは蘇州の出身、私も北京で学んだ普通話野郎なのでw、お互いに「香港で肩身の狭い大陸人」みたいな気持ちがあって(私は日本人ですが)、時計のこと以外も色々お話いたしました。
その後、上掲のサイトに「追記」が掲載され、矯大羽さんが病に倒れたことを知りました。お見舞いにいかなくては…と思いつつも、香港を既に離れていたので、天儀軒を再訪できたのは2014年のことでした。以下、その時のツイートをまとめております。
2014年 香港紀行より
HSBC本店に寄ったついでに、ワールドワイドハウスに立ち寄る…以前から気になっていた、「あの店」のその後を確認するためである。半ばあきらめながら探してみると…あった!昔のまんまではないか! #香港紀行 pic.twitter.com/j7gETQKJNn
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
この『天儀軒』とは、世界的に著名な中国人時計師である矯大羽氏が開いたお店である。昔、香港に住んでいた頃、この店を訪れて、矯さんに長々とお話を伺ったことがあった。私は何も買ってないのに、時計雑誌をプレゼントしてくれた #香港紀行 pic.twitter.com/T4INnDjlxR
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
矯大羽氏は蘇州出身で、1980年に香港へやってきた。詳しくはウィキペディアにものっている。 http://t.co/PcqeiDS20Q 病後、彼がどうなったのか、それを確認するべく、やってきたのだ。 #香港紀行 pic.twitter.com/7BGXZpp7An
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
中に入ってみると、矯大羽氏が座っていた席には、ご婦人が座っていた。突然の訪問で少し警戒されたが、日本のファンであり、矯氏が病気になる前に、この店を訪れて、お話を伺った者であることを告げると、ようやく安心してくれた。 #香港紀行 pic.twitter.com/3QorLILgpG
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
矯大羽氏は子供の頃から機械いじりが好きで、特に時計が大好きだった。学校にも時計を持って行き、バラしたり組んだりする内に、時計の構造と修理法を独学で身につけたそうだ。そして文革が終了して落ち着いた1980年に香港へやってきた #香港紀行 pic.twitter.com/pTtzH7yo14
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
矯大羽氏は時計で身を立てるためにやってきたのだが、1980年当時の香港は、大陸からの移民への差別が今よりも酷かったらしい。私自身、香港にいた頃は、普通話を使うことで、香港人からの差別を実感していたので、他人事ではなかった #香港紀行 pic.twitter.com/SblFS5n9xU
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
本来同じ民族なのに、香港人から差別される苦しい日々が続いたが、時計マニアであった当時のHSBCの社長に腕を認められ、矯大羽氏はこの店をプレゼントしてもらった…と私は聞いた。彼が話しながら目を潤ませていたのを今でも覚えている #香港紀行 pic.twitter.com/Dh8gkvuQJz
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
それから、矯大羽氏はトゥールビヨン機構を持った腕時計を開発した。当時、彼は東洋で唯一のトゥールビヨン技師であったらしい。 #香港紀行 pic.twitter.com/dxSFxad0n3
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
それから、矯大羽氏のトゥールビヨン機構は、中国とスイスと米国で特許を取得し、独立時計師アカデミーのアジア人初のメンバーとなる⇒ http://t.co/KEkXGwPFWh 彼は中国の誇りであり、アジアの誇りでもある。 #香港紀行 pic.twitter.com/mMTrCbLXrN
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
彼は香港へ移住したが、中国を捨てたわけではない。時計の技術で世界に挑戦するために香港へ出てきたのだ。香港人からの差別に苦しめられながらも、祖国への愛国心で一生懸命がんばった…と言っていた。それはこのポスターを見てもわかる #香港紀行 pic.twitter.com/BZxMQweQdW
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
中国人の名を、世界の時計の歴史に刻むのが、彼の「愛国」であったのだろう。私は日本人であり、中国人ではないが、彼の真っ直ぐな愛国心に感動した。私も彼のように生きたいと思うようになった。そういう意味で、彼は私の心の恩人である。 #香港紀行 pic.twitter.com/k6w5zw1ljF
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
ウィキペディアでは矯大羽氏は「急性脳溢血に倒れ」とあるが、夫人によると痛風がキツくて動けないそうだ。仕事に復帰することはもうできないが、まだ生きてる。店も続けてる…とのこと。復帰出来ないのは残念だが、消息が聞けて良かった #香港紀行 pic.twitter.com/uJamQyK8Wv
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
ちなみに蛇足ではあるが、矯大羽氏の父は、西泠印社のメンバーであった。中国の伝統工芸技術者の血統に生まれた矯氏が、その後、時計の分野で世界に名を轟かせたのだ。私は矯氏との出会いをきっかけに、その後、西泠印社を訪れたが、その訪問記はまた後日、ツイートしようと思っている。 #香港紀行
— 黒色中国😷 (@bci_) 2014年7月19日
結局、西泠印社の件は、まだツイートしておりません。
写真はあるんですけど、古いコンデジだったので画質もよろしくない。写真撮影のため、改めて訪問してみようかな…と思うものの、今は新コロの騒ぎで、それどころではありません。
それと、その後、セントラルの天儀軒がどうなったのかも気になりますが、香港も現在入れない状態です。
新コロが落ち着いたら、両方とも、足を運んでみようと思います。
関連リンク:日本語
▲一応、基本…ということでウィキペディアの記載。
▲『ちょい枯れオヤジ』の腕時計指南。ちょい枯れオヤジ氏はどうなったのでしょうね…もう2年近く更新がありませんが…
▲矯大羽さんの時計師としての功績を写真付きで読むならこちら。
▲東京の時計店「レ・ザルティザン」のブログ。こちらによると、矯大羽さんは上海で療養されていたそうです。
▲「レ・ザルティザン」ブログ。2011年の再訪の記録。
関連リンク:中国語
▲百度百科(中国のウィキペディアみたいなの)の記載。かなりボリュームありますが、全部中国語。現在まだ死亡については更新されていません。
▲中国語での追悼記事。西泠印社の会員だった矯大羽さんの父に関する記述もあります。矯大羽さんの篆刻作品の写真も。
▲矯大羽さんの時計界における地位に関する記事。
▲矯大羽さんの設計による「蘇州」の腕時計(21石)の試作品。お値段はなんと4600元!「蘇州」の機械式腕時計は中国の骨董屋で何度か見たけど、大体は100元もしない安物だったはず…中国のネットで確認したら、一般的な蘇州は17石なので、21石の試作品は上掲のもの1つか、他にあったとしてもごく少数なのでしょう。矯大羽さんが香港に出てくる以前…文革期に作られたそうです。
▲矯大羽さんの生涯についてまとめた記事。香港移民後について詳しい。HSBCの社長のエピソードもこちらにのってます。
▲60万HKDで落札された矯大羽さんのトゥールビヨンに関する記事。
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このブログ記事のために、改めて矯大羽さんに関する情報を探してみましたが、アチコチに散逸する形で、ディープな情報がありますね。日本語になってないのがほとんどなので、私の方でもいくつか訳してみようかと思っております。ちょっとお時間ください。
▲機械式腕時計について学びたい…という人にオススメなのはこちら。私はこの本を繰り返し読みました。 こういう本を暗記するぐらいシッカリ読んでから中国や香港の時計屋に行くと、店員や修理人との話もはずんで面白いです(^^)