黒色中国BLOG

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AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gの購入を悩んでいる人のために

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▲本記事は、これら2つの記事の続編となります。

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AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gを4年前に購入して以来、このレンズを使いこなすために、いろいろ悩んで試行錯誤しながら積み重ねてきた私の考察を、こちらにまとめて公開しておきます。このレンズの購入を検討している方々の参考になれば幸いです。

【目次】

『ダカフェ日記』と50mmへの回帰

私が写真を始めた頃は、ほとんどの写真を50mmの単焦点レンズで撮りました…というより、他の交換レンズを持っていませんでした。しばらく経って、長年溜め込んだ狭い画角への不満のためか、28mmの単焦点レンズを常用するようになって、50mmをほとんど使わなくなりました。

50mmのようなタイトな画角で撮り続けていると、構図の勉強になるので良いとは思うのですが、やっぱりこれ1本では撮影が大変です。28mmだと適当に構えても何となくそれなりに写るし、被写界深度が深いのでピント合わせも目測で充分。大変使いやすいレンズでした。

ダカフェ日記

ダカフェ日記

  • 発売日: 2007/07/05
  • メディア: 大型本

でも、しばらくすると、『ダカフェ日記』というブログが流行りまして(当時のことを知っている人でないとわからないと思いますが、あの写真ブログがもたらした影響は凄かったですね)

やっぱりボケ味を活かした描写がいいな…と思うようになり、50mmの単焦点レンズの画角を見直して、2012年にAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gを購入したのでした。

AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gの問題点

歪み…ソフトウェアでの補正が前提なのか

標準レンズのような基本的なものは、ニコンみたいな老舗のカメラメーカーにとって、既にやり尽くされた、手慣れた製品で、当然の如く優秀なものに決まっている…と思い込んでいたのですが、意外なことにAF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gは、かなり歪みの強いレンズでした。

▲DXOMARKのテストを見ると、ディストーションが0.5%になっております。

アサヒカメラ2011年2月号の『ニューフェース診断室』で、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gを取り上げていますが、そちらでも、

歪曲収差はタル型で、最大マイナス2.24%。単焦点レンズとしてはやや大きめだが、ソフトウェアで補正することができる。

…と解説されていました。

たぶん、このレンズはF1.8の明るさを確保しながら、価格と重量を抑えるのが大前提の設計になっているのでは…

そもそも歪みが気になるような人なら、もっと高級な機材を使うわけで、このレンズはソフトウェアでの歪み補正を前提とした、アマチュア向けのレンズ…と考えていた方が良いかも知れません。

私は購入当初、「こんなに歪むなら、単焦点である必要がない…明るさだけが取り柄のレンズか…標準ズームで充分だな」と考え、あまり良いレンズとは思っていませんでした。

画角…侮れない「2.5mm」の差

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私は昔、かなり長い期間、ライカM3に50mmのレンズだけで撮影をしていたので、 目の中に50mmのブライトフレームが浮かび上がるほどに、50mmの画角に慣れているつもりですが、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gを使ってみると、なぜか「目の中のブライトフレーム」通りの画角にはなりません。

私が愛用しているニコンD40のファインダーの倍率が低いので(D40は0.8倍、ちなみにライカM3だと0.91倍)、そう感じるのかな…と思っていたのですが、撮影した写真を見ても同様に、狭苦しく見えます。

APS-Cフォーマットでは焦点距離35mmのレンズが、フルサイズの50mmに相当する標準レンズ…ということになっていますけど、正確に計算すると、35mm×1.5=52.5mmになります。

画角で差を比較すると…

▲AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gの画角は44度。

▲AF-S NIKKOR 50mm f/1.8Gの画角は47度。

たった3度の違いですが、パーセンテージで言えば7%も違います。

長く使えば目も慣れるのでしょうが、7%も画角が違ってくると、これはもう全く別のカテゴリーのレンズと思っておいた方が良いでしょう。「標準レンズ」というくくりで、同一のカテゴリーとして扱うには画角が違い過ぎます。

「初めての単焦点標準レンズ」として使う人なら、特に問題ないと思いますが、フルサイズの50mmで慣れている人が、DXフォーマットの35mmを「標準レンズ」のつもりで使い始めると、かなり違和感があると思います。

「SIGMA 30mm F1.4 DC HSM」という選択肢

APS-C用で焦点距離33mmのレンズがあれば、1.5倍にすると49.5mmになるので、フルサイズの50mmに最も近いのですが、残念ながらそういう中途半端な焦点距離のレンズは存在しません。

しかし30mmという選択肢はあります。

▲こちらは先述の『ダカフェ日記』で有名になった通称「ダカフェレンズ」の後継レンズになりますが、幾つかの問題点があります。

  • 重量435g…ちなみにニコンのDX35mmf1.8Gは200g。
  • 防滴防塵には未対応(シグマに直接電話で確認しました)。

ネットで作例を見ると、画質がいいのは確かなようなので、少々価格が高いのは別に良いのですが、ニコンの35mmと比べて重量は2.3倍で防滴防塵には未対応…というのは私の用途には不向きなので諦めました。

AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gの良いところ

ずっと文句ばかり並べているような内容になりましたが、このレンズの良いところをあげると

  • 軽い
  • 明るい
  • シャープ
  • 防滴防塵ではないが、それなりの耐久性は期待できる
  • 安い

…ということになると思います。

私は現在カメラ本体はニコンD40しか所有していませんので、最新のDX機にこのレンズを付けた時の写り具合は不明ですが、ニコンD40で使ってみる限り、写りは普通に良好です。

人物撮影向きのレンズ?

このレンズを使って私が撮影した写真で、ここでお見せ出来るものは残念ながらありません。何故かと言うと、家族や知人を撮ったものがほとんどなのです。

というのも、このレンズを使い続ける内に、人物撮影に向いている…と思うようになりました。フルサイズの50mmから7%望遠寄りの画角は、ポートレート用に向いているのでしょう。真四角のものを撮ると歪みが一目瞭然ですが、被写体が人物なら歪みはほとんど気になりません。

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中国にいると、人物を入れて街角の光景を撮りたくなることが多いのですが、そのような際に「フルサイズの50mmから7%望遠寄りの画角」は、丁度良い距離感になるような気もします。

※上掲の写真は上海の下町で、標準ズームを使って撮影したものですが、こういう写真を撮るのに AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G は向いているのでは…という参考です。

ボケ味

以前、私はツアイスのプラナー50mm F1.4を使っていた時期がありました。あちらは甘くとろけるようなボケ味ですけど、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gはそれほど見事なボケ味ではありません。

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▲こちらはあまり参考にならないと思いますが、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gを使って、絞り開放でレンズキャップにピントを合わせて撮影したもの。穏やかなボケ具合です。

たぶん、ボケ味について私が感じているのは、レンズの材質や設計というよりも、「F1.4」と「F1.8」の違いに過ぎないものでしょう。ニコンの方は、7枚羽の円形絞りなので、クセのないスッキリしたボケになっていると思います。

防滴防塵(公式には非対応ながら)

▲こちらでも書きましたが、ニコンの人に聞いてみたところ、防滴防塵を完全に保証するレンズはないものの、ある程度、それらの性能を期待できるレンズとして

  • マウント部分にゴムがついていて
  • 鏡胴が伸び縮みしない

…という条件に合致するのは、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gが、最も安価で使いやすい焦点距離のものと思います。

私は以前、中国を旅行中に、滝に打たれるような集中豪雨を2回経験しています。顔に当たると息苦しくなるぐらい激しい雨で、鼻の周りを手で囲まないと呼吸できませんでした。

服も下着も靴の中も、カバンの中の持ち物も、完全に水浸しになりましたが、それ以来、カメラとレンズの防滴防塵について、かなり敏感になりました。

アマゾンのカスタマー・レビューを見ると…

撮影機材を購入する時に、ネットで色んな情報を参考にしますが、結構侮れないのがアマゾンのカスタマー・レビューです。モノによってはあまり書き込みがありませんけど、売れ筋の商品になると、何百もの書き込みが寄せられています。

アマゾンのカスタマー・レビューでカメラやレンズの感想を書く人は、大半が初心者みたいで、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gの感想で言えば、レンズキットの標準ズームを使っていた人が、初めての単焦点レンズとして購入したケースが多いようですが、中にはかなり詳しい人の感想も寄せられており、そういう書き込みを上手く探し出せば、有用な参考になると思います。

▲その中に、こんな書き込みがありました。

壊れるのを覚悟で、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gを中古で1本買って、雨が降る中、濡れながら山を登って写真を撮ってきた…という内容ですが、レンズは壊れることもなく、結露もしなかった…とのこと。

画角とか画質で言えば、もっと頑張って欲しいと思うところもあるのですが、AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8Gは、華やかなボケ味や、繊細な描写を楽しむような…いわゆるアート志向のものではなく、その真価は耐久性とコストパフォーマンスにあるのではないか…いかにもニコンらしい話になってきたじゃないですか(笑)。

私もこのレンズで、中国の過酷な条件下での撮影に挑戦してみようと思います。

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