西沙諸島周辺に米軍の艦船が接近したので、中国側で何かニュースはないかな…と探していたら意外なものを見つけました。
http://roll.nxing.cn/article/269330.html
▲「西沙諸島の戦い」(1974)で、中国軍の捕虜となった南ベトナム軍の将校と兵士合わせて48名にまぎれて米軍の少佐が捕虜となっていた…というもの。ちょっと内容をかいつまんでご紹介しようと思います。
▲戦争画『西沙諸島の戦い』(海軍上海博覧館収蔵)
副題は「中国人为我买面包很仁义」(中国人はとても優しく私のためにパンを買ってくれた)というもの。
捕虜になって、共産主義者に捕まったけど、とても人道的な扱いを受けた…という内容です。
- 捕虜が拘束されたのは1974年1月21日。
- 2日目に飛行機で広州に運ばれ、軍の駐屯地に秘密裏に護送。
- 捕虜は服は破れ、髪はボサボサ、ある者はひげを伸ばし、精神的に疲れており、中国軍の兵士を見るととても恐れて敵視していた。
- 中国軍は軍事委員会の「優待捕虜、教育感化」要求に則って、熱い風呂に入れて散髪、看病をしてやり、各人に二着づつ着替えを与え、日常生活用品と文化娯楽用品を買い与え、毎回の食事に一汁四菜を用意し、毎日体操をさせ、「組織学習」の他に、「文体活動」を与えた
…とあります。
こうやって見ると、第二次大戦終結後の、大陸で捕虜収容所に入れられた日本兵を思い出しますね。現在も中国で捕虜を優待してくれるのかは不明ですけど、少なくとも1970年代にはこうしたことが行われていたようです。
「人道的な扱い」の目的は…
読み進めると「人道的な扱いに感動した」という話になり、そこから捕虜の尋問が始まります。
- 甘泉島と珊瑚島で捕虜になった南ベトナム軍軍人の中には中国語が出来る者が含まれていた。
- 「島での生活条件は劣悪で、基本的な物資も補給されず、ある時は数日間食事がなかった」
- これらの捕虜は40~50歳であった。捕虜の証言によれば、ベトナムは長期に渡って南北で戦争をしており、兵員の消耗が激しく、そのため40~50歳の者が島嶼で任務につくことは少なくなかった。
- 中国軍は厳しく規定に乗っ取って、これらの捕虜を人道的に扱った。
- ある捕虜が重い風邪を引いた。注射を打ち、2名の兵士が昼夜つきっきりで看病した。洗面を手伝い、薬を与え、炊事班長は心を込めて、彼らのために病人食を作り、病床まで運んで食べさせてやった。
- この捕虜は病気から回復するととても感動した。
- 米軍の少佐は最初とても中国軍兵士を敵視していたが、少佐が黄胆性肝炎を患うと、入院治療を行うために、病院へ連れて行こうとしたが、彼は銃殺されると思い込み、ひざまずいて命乞いをした。
- 通訳を通じて、再三説明をすると、少佐はやっと信じてくれるようになり、入院することになった。
- 少佐はマントウや米飯を食べなれないため、米国のパンを食べたがった。中国軍兵士は広州にクルマを飛ばしてパンを買いに行かせ少佐に与えると彼はとても激しく感動し、中国人はとても優しいと言った。
…このような「教育改造」を経て、思想が変わるのも早く(思想転変很快)、特に南ベトナム軍の将兵は、帰国すれば中国を良く宣伝し、中国人民との何代にも渡り友好を望む…と言うようになったそうです。うーん(笑)
別れに記念品と食料を与えた
- 捕虜の送還にあたり、上層部の指示で、捕虜には記念品と食料が与えられた。
- カバンの中に、マフラー、服、タバコ、子供のオモチャなどが入れてあり、彼らはとても感動した。
- 米軍少佐は治療にあたった医療人員にとても感謝し、看護師に櫛を送って記念としたが、まだ気持ちが不十分だとして、許しを乞うのであった。
- 2月28日午前、中国軍は武装した7名の兵士に捕虜を同行させ、深センの羅湖にある出入境管理所まで連れて行った(訳注:つまり香港で引き渡しだったのですね)。
- 捕虜が深センを離れる時、南ベトナム軍の将兵は目に熱い涙を浮かべ、中国側の人員と抱擁し握手をした。
- 米軍少佐は、特に何も感情をあらわすことはなかった。名前を呼ばれ、彼に深センから離れても良いと告げると、彼は何も言わず、無表情のまま振り返ることなく、羅湖橋を渡ったのであった。
この記事は2013年に中国の新聞で発表されたものを、2016年1月18日にネットで掲載したものなのですが、なぜ今頃になって42年前のエピソードが…と私は思うわけです。
ベトナムと米国との緊張が高まりつつある中で、このエピソードを中国人民に読ませることは、どういう意味を持つのか。
中国のメディアって、たまに理解しにくいことをやりますね。
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