黒色中国BLOG

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「一人っ子政策巡り国を提訴 中国、子を亡くした180人」と2つのドキュメンタリー映像

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 今年から「一人っ子政策」が取りやめになったことに伴い、今までこの政策で押さえつけられていた不満が噴出し始めているようだ。たまに、ニュースで中国の事情を知る程度の人にとってはあまりピンとこない話かも知れないが、私がこのニュースを見て2つのドキュメンタリー映像を思い出した。2010年にアカデミー賞短編ドキュメンタリー部門ノミネートされた四川大地震のドキュメンタリー映画と、1998年に日本のテレビで放映された三峡ダムのドキュメンタリー番組である。

 中国の非自然災害~四川省の涙~
(China's Unnatural Disaster: The Tears of Sichuan Province)

▲こちらは私のツイートのまとめ。

▲こちらはその予告編映像(1分4秒)。

▲こちらは本編(38分54秒)。英中字幕付き。

言葉がわからなくても、映像を見れば大体の状況はわかると思うが、

▲こちらの宮崎正弘さんのメルマガの解説を読めば、あらすじがわかると思う。

本作品は、「地震のドキュメンタリー」ということになっているが、根底で扱われているテーマは、人命を軽視する中国政府と一人っ子政策の批判である。

四川大地震では7万人が死亡したが、そのうち子供の死者は1万人にのぼる。鉄筋の代わりに竹、モルタルの代わりにボロ雑巾を使うなどの手抜き工事で建てられた建物の下敷きになって、多くの子供たちが死んだのだ。

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亡くなった子供たちの多くは一人っ子である。親たちはもう新たに子供を産める年ではなかったりして、遺影を抱えて抗議の行進を始め、警官隊と衝突する。抗議者を鎮圧する警官の姿は、中国のニュースではしょっちゅう見かけるけれど、このドキュメンタリーに出てくる警官たちはどこか物哀しい。警官たちも一人っ子政策の対象であるし、地震の被害者でもある。鎮圧にあたる警官たちも、子供を亡くした親の気持ちがよくわかるのだろう。

三峡ダムのドキュメンタリー番組

1998年のことだったと思うが、日本テレビが制作した三峡ダムのドキュメンタリー番組があった。

その中で、三峡ダムの建設でダムの底に沈んでしまう村の立ち退き交渉を取材していたのだが、これが一人っ子政策と関係する。

ダムの底に家が沈んでしまう人には、代わりに別の場所の家が提供されるようになっているのだが、当局の人が、子供を堕ろさなければ新しい家を与えないとして、堕胎を強要するのである。

当局の人と、妊婦の家族で大揉めして、最後は殴り合いのケンカになっていた…と記憶している。

*  *  *  *  *

中国では、大躍進政策や、文化大革命、天安門事件などで、多くの人民が政治に絡んで殺害されたことになっているけれど、

一人っ子政策による中絶を、「政治による人民の殺害」にカウントすると、少なくとも3億3千万人が殺害されたことになる。中国共産党が行った最大の人民虐殺は『一人っ子政策』ではないか。人口抑制政策にもそれなりの理由とメリットはあったのだろうが、本来生まれていたはずの3億3千万の命が政治によって殺されたのだから、この40数年間に一人っ子政策の実施で、人生を狂わされ、心に傷を負った中国人は何億人いるのだろうか。一人っ子政策の廃止に伴い、「積年の恨み」を晴らそうという人は、これからもまだ出てくるものと思われる。