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黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

中国対テロ部隊が火炎放射器で子供と女性を殺害…の真相を探る

ウイグル テロ 真相を探る
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中国の新疆で、特殊部隊が火炎放射器なども使用して子供や女性11名を殺害した…というショッキングなニュースがありましたので、ちょっと事情を調べてみることにしました。

▲こちらは産経のニュース。「テロリスト」の武装は刀や斧だけで銃火器は持っていなかったようです。

中国の武装警察は実際に火炎放射器を使用している

▲こちらはたまたまYOUTUBEで発見した映像。今年3月にアップされたものなので、今回の新疆の件とは無関係です。中国の動画サイト「優酷」から転載されたものみたいですが、中国国内のテレビニュースの一部でしょうか?

【軍事】中国対テロ実戦ビデオ 火炎放射器怖えええ ‐ ニコニコ動画:GINZA

▲日本での転載は最初にニコ動で行われていたそうで、こちらはキャプションも充実しているのでわかりやすいです。

動画をよく見ると、逃げ回っている人もおり、最後に体が燃えたまま動かない人の映像も出てくるので、これはもしかしたら演習ではなくて、実際の戦闘なのかも。ただ、ところどころ実戦中に撮ったとは考えにくいシーンがあります。武装警察が塀を乗り越えて突入する時にカメラが塀の内側にあったり、火炎放射器の着弾点側にカメラがあったりするので。ただ、戦時のプロパガンダ映画などでは、実際の戦闘の映像に、戦闘後に撮影したヤラセ映像を混ぜたりするのはありますので、この映像もそのように作られている可能性はあります。

この映像を見てわかるのは、新疆における対テロ部隊は火炎放射器が正式の装備として用意されていることですね。新疆で「テロリスト」が潜伏している地域は映像に出てくるような場所が多く、洞窟に潜伏しているという話もよくあるので、火炎放射器が装備されるようになったのではないか…と思います。

 BBCの中国語ニュースを読む

中国警方在新疆行动中“使用火焰喷射器” - BBC 中文网

産経のニュースによれば、解放軍報に今回のことを伝える原文があるそうですが、そちらを探す前にBBCで解放軍報からの引用を含めたニュースをみつけたのでそちらを読んでみようと思います。

《解放军报》说,在行动过程中,为了驱赶出藏匿在山洞里的武装份子,执行任务的解放军曾使用火焰喷射器。武装份子在逃出洞外后被击毙。

『解放軍報』によると、行動過程において、洞窟に隠れた武装分子を追い立てるため、任務を執行していた解放軍は火炎放射器を使用した。武装分子は洞窟から逃げ出した後に射殺された。

文章称,起初警方试图用催泪瓦斯和眩晕手榴弹将藏匿的武装份子赶出,而后一名军官下令使用火焰喷射器。

警察側はまず、催涙ガスと閃光手榴弾で隠れている武装分子を追いだそうとし、それから1人の軍官が火炎放射器の使用を命令した。

▲閃光手榴弾とはこういうものです。

BBCのニュースを元に、事情を整理してみると、

  • 山の洞窟の中に「武装分子」(といっても刀と斧ぐらいしか持ってない)を解放軍特戦隊が発見した。
  • 洞窟から追い出すために、催涙ガス閃光手榴弾を使用した。
  • それから火炎放射器を使用した。
  • 洞窟の外に出てきた「武装分子」を射殺した。

最初から全く捕まえる気はないみたいですね。徹底して皆殺しにするためにやっているような感じです。

中国の反論:「西側メディアの反テロはダブスタだ」

BBCが火炎放射器の件を報道したのは11月23日。それから2日後の25日に中国の環球網(人民日報傘下の新聞「環球時報」のネット版。ちなみに環球時報は「中国の産経新聞」と呼ばれている)に、「英米メディアは中国の反テロ行動を中傷している」という記事が掲載されました。

これによると、

  • 米CNBCは、「中国はテロ容疑者に火炎放射器を使用した」というタイトルで報道した(※中国側は「容疑者」じゃなくて「テロリスト」なんだよ!と言いたいのでしょう)
  • 英デイリー・エクスプレスはタイトルで「火炎放射器」を大きく書いて、「テロリスト」はカッコ書きだった(※これは日本の報道でもそうです。でも、細かいところをツッコミますね)
  • BBC中国語版は、武装分子のことはあっさり書いて、中国の武装警察が火炎放射器を使用したところを強調し、テロリストが当時銃器弾薬を所持していたこと、洞窟に隠れており「守り易く攻め難い」状況であったことを選択的に見落としたようだ。
  • 国連は11月20日に、テロと戦うために「一切の必要な手段」を用いることを各国に明確に許している。事実上、西側諸国はISと戦うにあたって先進的かつ強力な武器を使用しているではないか(※ただし、中国が火炎放射器を使用した件は1ヶ月以上前のことです)
  • 西側メディアの反テロにおけるダブスタはいかなる検証にも耐えうるものでなく、西側国家は人権を強調するも、中国公民がテロの犠牲となり、中国社会が国家の反テロ行動を支持している事実を見落としている。

 …と書いています。

解放軍報の原文を読む

▲こちらが鳳凰網に転載された解放軍報の記事。火炎放射器でテロリストを殲滅したというのはこれがソースなわけですが、これによると、

  • 火炎放射器が使用された今回の件で、作戦任務を行ったのは、武装警察新疆総隊四支隊特勤中隊。反テロ部隊として有名だそうです。
  • 数十名のテロリストは群衆を殺害した後で(これは9月の鉱山での「テロ」のようです)天山山脈の奥深くに潜んでいた。彼らは地形を熟知しており、奪った銃と弾薬を所持していた
  • 特勤中隊は雪降る中、5つの高山を越えて、捜索は10時間以上に及んでいた。
  • 「暴徒」は断崖絶壁の洞窟に隠れており、守り易く攻め難い状況にあった。説得するも効果なく、催涙弾、爆震弾(閃光手榴弾と思われる)を使用するも動静見られず、日が暮れて薄暗くなってきたので、火炎放射器を使用したところ、刀を持った「テロリスト」が特戦隊に向かって飛びかかってきたので全滅させた。

…とあります。

※ ※ ※ ※ ※

さかのぼって、産経の報道では火炎放射器で殺害された人の中に「子供と女性」が含まれていたとありますが、これはRFA(ラジオ・フリー・アジア)が現地住民の話として伝えているもので、解放軍報の中では全く出てきません。

解放軍報の記事のおかしなところは、「テロリスト」は銃と弾薬を持っているはずなのに、火炎放射器で追いつめられてから、特戦隊に反撃する時には銃を使わず、刀を使用した…という点ですね。

BBCの記事は、そのソースである解放軍報の記事を元に書いているものですが、検証してみると解放軍報の記事からストレートに引用したのではなくて、部分的に「選択的な見落とし」(「テロリスト」が銃器を所持していた件)や書き換え(解放軍報の原文では、「テロリスト」は火炎放射器の攻撃を受けて「洞窟から逃げ出した」のではなく、「洞窟から武器を持って出てきて特戦隊に飛びかかった」)が見られます。

中国側の反論である「西側メディアはダブスタじゃないか!中国の反テロを中傷しやがって!」というのは確かに理屈としては合っているのですが、そもそもの情報公開が不徹底で、特戦隊に全滅された「テロリスト」が本当にテロリストなのかもわからない、そもそも全滅させてしまったら捜査のしようもない、海外のジャーナリストが現地に入って取材・検証することもできないわけで、西側を批判するんだったら、中国はまず西側並みの情報公開をして、取材を受け入れるべきでしょうね。

それと、解放軍報の記事を読むに、これは特戦隊の活躍を褒め称えた「戦記物」みたいな感じで、「テロリスト」の殲滅を喜んでいるような風潮がある。そういう中国の姿勢こそが、西側に「誤解」を生じさせる土壌を自ら用意しているのではないでしょうか。

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