黒色中国BLOG

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【「フュージョン寿司」は日本食文化の敵なのか?】香港で発見した「先祖返りの江戸前寿司」について

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中国のネタはあまりないのだが、世界新聞はよく見させて頂いている。私も旅が好きだし、旅からの視点で、日本を再発見させてもらえるからである。

上掲の記事によると、日本の本来のスタイルからかけ離れ、海外で独自発展した寿司のことを「フュージョン寿司」と呼ぶらしい。この記事を読んだ時に、1つ思い出したことがあるので、書いておこうと思う。

あるシンポジウムの席上にて

以前、私が参加した日本の食品輸出に関するシンポジウムの質疑応答にて、ある人物が大演説を始めたことがあった。その概要を記すと、海外において日本人以外のアジア人が、勝手に「日本料理」を自称し、中華料理や韓国料理みたいなものと区別できないような、いい加減なものを出しているので、日本政府と各省庁は連携して、認定制度を設けよ!スシポリスを各国に派遣せよ!日本料理のブランドを守れ!という主張であった。

日本食が世界遺産に登録されたことなどもあり、世界的に日本料理が注目され、流行しているのに便乗して、中国人や韓国人などが勝手に「日本料理」の名前を使って、いい加減なものを出し、日本料理を貶めている!というわけだが、この件について、私は異論がある。

香港で発見した「先祖返りの江戸前寿司」

2002年に、香港へ行った際、友人が「面白い寿司屋があるのでいってみませんか」と誘うのでついて行ったところ、オニギリのような大きいシャリの寿司が出てきた。しかも甘い。3つで20香港ドルもしなかったと記憶している。甘いオニギリを3つも食べると、それだけでお腹いっぱいになってしまった。

ただし、思い返してみると、江戸時代の寿司はシャリが大きかったらしい。

▲こちらのブログが参考になると思う。

私が行ったのは、香港でも新界(ニューテリトリー)の非常にローカルな地域であって、地元の香港人がやってくるような店であった。コーズウェイベイやチムサーチョイの高級店ではない。こういう店では味よりも値段、そして量である。

そして江戸時代の寿司は、塩分が高めであったらしい。昔は日常的に肉体を酷使することが多かったため、塩分補給が必要だったのではないか、と思われる。

現在の香港では肉体労働がキツイ人はそれほどいないと思われるが、香港は暑く、汗を大量にかくので、保水性を高めるために、甘いものが好まれる傾向にある。そこでシャリに砂糖を多めに入れて、香港人の口に合うようにしているのではないだろうか。

このように、香港の事情に合わせて、ローカライズされているわけだが、お値段相応の「日本らしさ」を体験できて喜んでいる香港人もいるわけで、それでちゃんと商売は成立しているのである。ここに寿司ポリスを派遣するのは無粋の極みであろう。私が香港で食べたのは、「ニセモノの寿司」というよりも、現地のニーズに合わせる内に、「先祖返りした江戸前寿司」だったのではないか。

こういう「なーんちゃって寿司」から日本の寿司に興味を持って、日本に旅行したら本物の寿司を食べてみたい!と思う人だってちゃんといる。そういう本物を求める人たちが今、日本に訪れ、老舗ののれんをくぐっているのである。

日本食を「文化」としてとらえた場合、ナショナリズム的な意識も作用して、「日本料理を守れ!」という声もあがってくるのだろうが、日本食を「商売」としてとらえた場合、やはり客に合わせたものを出すしか無い。世界的に日本食が広がる中で、多様性が深まるのは当然のことであろう。フュージョン寿司、大いに結構ではないだろうか。

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