黒色中国BLOG

中国について学び・考え・行動するのが私のライフワークです

中国の「低層民衆」について

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先日、『中国低層訪談録』の著者である廖亦武さんのツイッターアカウントをみつけたので、すぐにフォローしておいた。廖亦武さんは、たまにしかつぶやかないし、ツイッターにあまりチカラを入れてないので、そっけないツイートが多いのだが、今日のツイートはちょっと気になった。

中国で、失踪児童を父母と一緒に探しているアメリカ人記者…のニュースを伝えるツイートだった。

要約すると、長年中国で活動していたアメリカ人記者がいて、彼は特に中国の低層民衆に関心を寄せる人であったので、子供を誘拐された父母と一緒に子供を探して、その経過を報道していた。すると、中国政府に入国を拒否されてしまった…という内容であった。

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廖亦武さんは、『中国低層訪談録』という、中国の低層民衆へのインタビュー集を出しているぐらいだから、同じく低層民衆に関心を持っていた米国人記者に興味を持ったのだろう。

中国では児童誘拐が多く、その摘発のニュースも年に何回か現れる。どこそこで、100人以上の誘拐児童を救出しました…強制労働をさせられていました…という内容である。

中国自身が、その手の報道をしているのだから、別にその米国人記者を入国禁止にしなくてもいいじゃないか…と思ったりもするわけだが、この米国人記者は、低層民衆を報道しながら、政府批判もしているので、それで引っかかったのであろう。

なぜ中国政府は低層民衆を外国人に見てほしくないのか

私自身、中国を旅している時に、列車の車中で硬座車両に乗っていたりして、他の乗客と話していたり、車中の写真を撮っていると、乗務員がすかさずやってきて、いろいろと「職務質問」をされることがあった。職業は何なのか、何のために外国人が硬座車両に乗っているのか、何のために話をしているのか、どんな写真を撮ったのか、写真は何の目的で、どういうところで使うのか…と細かく、詰問される。そして、「写真を撮るな」と言い出す。「中国の良いところを撮って下さい」とも言われる。

中国の「官」の立場の人からすると、中国の「低層民衆」は、隠すべき「悪いもの」であって、外国人に見られたくないものであるらしい。外国人が中国の貧しさにレンズを向けていると、悪意をもって中国の恥部を国外に晒すためにやってきたんだな…と考えるようなのだ。

なぜ中国政府は低層民衆を外国人に見て欲しくないのか…それは、中国のさまざまな社会の矛盾と問題が、低層民衆の中に堆積しているからだろう。廖亦武さんや、例の米国人記者が低層民衆に注目するのは、そういう理由ではないだろうか。

その一方で、中国政府は、「発展途上国」であると偽装するために、低層民衆をプロパガンダに利用する。外国とODAやCO2の排出権の交渉の時に利用できるからだ。低層民衆をひっぱりだし、「ほら、まだこんなに貧しいのですよ」と訴えるわけだが、中国は決して「発展途上国」ではなく、半ば故意に、公平な社会の建設に失敗した国じゃないか…と思う。

中国の低層民衆は、高度に政治的な存在であるために、その「利用」は、政府の独占下で、しかるべき利益誘導をするものでなくてはいけない。外国人や反政府活動家に利用されてなるものか…という意識が強いのであろう。

私自身、中国でやむなく写真を「消させられた」こともあったし、うっかり写真を取り損なったことも多い。低層民衆と話をしていて、たくさん貴重な内容を聞けたのだけれど、録音もしていなければ、メモも残さなかった…ということも少なくない。低層民衆との交流から、学ぶことは多かったけれど、それを後日ブログのネタにしようとか、全く考えていなかったので、今から思うと非常に勿体ないことをしたと思う。

たまにツイッターの方で、思い出しながらちょっと書いていたりするけれど、低層民衆の声が、中国のプロパガンダを経由せずに、日本人に届けられることができれば、日本人の中国観は、もう少し充実したものになるのではないか。

もし、次の機会があれば、そういう記録もちゃんと残しておこう…と、廖亦武さんのツイートを眺めながら考えたのであった。